gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ケインズの美人投票 その1

柄谷行人『批評とポストモダン』の中に、次のような内容の部分がある。(一部は本文をそのまま抜粋)・・・経済学者ケインズは、金融市場の原理を美人投票を例に説明している。それは、みんなが美人だと思う人の名前を書き、それを集計して美人として票が最…

映画 ミスター・ロンリー

タイトルの通り、さびしい映画である。マイケル・ジャクソンの格好でずっと生き続けている主人公が、マリリン・モンローの格好で生きている人と出会い、人まねで生きている人たちの共同生活の場へ誘われる。こう書いただけで、滑稽さとさびしさがじんわりと…

中国の満員電車に乗る その2

翌朝、列車が来るとなだれ込むように大勢が乗り込む。重い荷物を持った私は、やっとの思いで列車の中へ入れた。もし、自転車がまだ手元にあったら、乗り込むことは不可能だったかもしれない。車内は、向かい合わせの席がならぶ。満員の車内で、座っているの…

中国の満員列車に乗る その1

内モンゴルの草原を800キロ自転車で移動した後、赤峰(ツーファン)で自転車を公安に没収された私は、赤峰から北京まで列車で移動した。切符を買う長い列にならんで、ようやく自分の番が回ってきたかと思うと、言葉が通じないところで「メイヨ」という窓…

照明塔の風化

会社の行き帰りに横を通る国立競技場。この照明塔の鉄柱に浮いた錆が美しい。傾いた柱に、錆垂れが垂直のラインを描いている。設計者がこのラインの組み合わせを意図したはずはない。私たちが追究している「なる」美しさは例えばこのように現れる。

映画 ノーカントリー

「ノーカントリー」という映画を観た。独特の風貌を持ち、こいつにはかなわないと思わせる力のある、無表情な殺し屋がキャラクターとして立てられている。彼が麻薬取引の金を奪って逃げる普通人を追跡し、普通人は結局死ぬ。そして、普通人の保安官が普通人…

顔のない人々

「てめえら人間じゃねえ。たたっ切ってやる。」という決め文句とともに、極悪人の手下どもをバッサバッサと切り倒し、一呼吸空いた後、最後に極悪人を切り倒してスカッと終わる。子供のころ、そんな時代劇をよく観ていた。スカッとしつつも、子供心にどこか…

世界に生まれ来る子供たち その5

人口問題と言えば、1979年から一人っ子政策を継続している中国のことが思い浮かぶ。2020年代には中国の人口は16億人でピークに達し、その後、減少に転じると予測されているそうだ。そもそも1979年以前の30年間は、人口を増やして、国力を高…

世界に生まれ来る子供たち その4

内装の仕事は解体工事から始まる。そのときに気をつけなければならないのは、水道・ガス・電気・電話線などの配管を傷つけないことである。これらをどこに通すか。見せるか、見せないか。気持ちのよい空間を考えるときに重要な要素である。これらを完璧に見…

世界に生まれ来る子供たち その3

飢餓と人口爆発が同時に起こっている国は、アフリカ南部に集中しているようである。それらの国の中のどこで、また、どのような状況でそれは起こっているのだろう。これを想像しがたくしているのは、飢餓問題をアピールするために使われる写真が、難民キャン…

世界に生まれ来る子供たち その2

25年前、私がタイを旅行中に小さな村へ貯水池をつくる学生ボランティアにたまたま参加したとき、村の人たちに避妊の仕方を伝える、というプログラムも含まれていた。集まった村人の前で学生がコンドームを親指につけて使い方を説明していた。一連の説明を…

世界に生まれ来る子供たち その1

世界の人口68億人のうち、10億人が飢餓に苦しんでいるという。飢餓人口はアフリカ南部に集中しているが、発展著しい中国にも、先日2016年のオリンピック開催国に決まったブラジルにも飢えている人はたくさんいるらしい。地震などの災害が起こると、…

意志 その7

この人口80人の村が、昔から何も変わっていないわけではない。陸の孤島と言えども、文明の波は押し寄せている。犬橇はスノーモービルに取って代わった。スノーモービルが走った跡は、雪が硬くなりすぎて、犬が足に怪我をしてしまうのである。生活を支えて…

意志 その6

周囲が雪に閉ざされているため、昼の行動範囲は極端に狭い。散歩といっても、景色が変わるわけではない。凍りついた川へ下りてみて、ずっと上流へ向かって歩いてみたい衝動に駆られるが、気候がそれを許さない。きっと何時間歩いても、隣の村へはたどり着け…

意志 その5

スティーブンス・ビレッジで見たオーロラについては、今まで数回書いてきた。http://d.hatena.ne.jp/yogosiurubi/20090715/1247662746http://d.hatena.ne.jp/yogosiurubi/20090509/1241885133http://d.hatena.ne.jp/yogosiurubi/20090423/1240498623オーロラ…

意志 その4

スティーブンス・ビレッジに着くと、小さな丸太小屋へ案内され、「ここを使って」と言われる。いつもは娘さんが使っているそうだ。高校生くらいの年の息子ジェイソン君を紹介され、彼が生活のためのいろいろを教えてくれる。部屋にはドラム缶を利用した薪ス…

意志 その3

セスナは低い空を飛ぶ。空から見たユーコン川支流の蛇行には驚くばかりだ。上のイメージはグーグルマップから。中心に、私が約1ヶ月を過ごした、人口80人の小さな村スティーブンス・ビレッジがある。平野部を流れる川は自然の理によって蛇行していく。日…

意志 その2

アンカレッジはアラスカ南部にある。まずは、防寒着とマイナス20度対応の寝袋を購入。そして、ユーコン川により近いフェアバンクスという町へ北上。ユーコン川は、ここからさらに150km北を流れている。例によって、フェアバンクスで一番安いホテルに泊…

意志 その1

その年の1月、私は6畳一間のアパートで「極北の大河ユーコン」というTV番組をみた。アラスカ中央部を東から西へ流れるユーコン川のほとりにある人口80人の小さな村での秋から春へかけての半年間のドキュメンタリーだった。・・・川の上流から氷が流れ…

感覚は磨いた方がよいか?

楽しく人生を過ごすためには、五感を磨いた方がよいだろうか?「磨く」という言葉を使うのだから、当然感覚は鋭くなっていく。鋭くなると、好き、嫌いの区別がつくようになってくる。例えば、食べること。味覚を鋭くすることによって、本当においしいものが…

スタッフ006の油絵 その2

彼は刻々と変わる彼自身を意識していて、その自然をそのままキャンバスに写し取ろうとしている。そして、もう一方で、過去のある時点で意図したことをそのままキャンバスに写し取ろうとしている。油絵という、描くために長い時間を要するメディアを選び取っ…

スタッフ006の油絵 その1

HPで『空間追究法人』とうたっているように、グリッドフレームは、より優れた感性を持ち、それを空間に生かしていく集団を目指している。これまでもさまざまな勉強会を行ってきたが、今月からの試みとして、それぞれのスタッフの個人的な作品を社内プレゼ…

京都・吉田山「白樺」の赤い扉を初めて開けたとき

京都で学生だった頃、夏の旅行先で知り合った京都人に教えてもらったバー「白樺」。描いてもらった地図は何ヶ月も放置されていた。このまま行くことはないかもな、と時折その地図を横目で眺めては思った。しかし、少し寒い季節になって、身の回りに哀しい出来…

台風一過

台風が通り過ぎた後の、澄み切った空気の東京の街で深呼吸をすることは、もしかしたら東京の生活の中で最高の瞬間かもしれない。と、書こうと思って、写真がなければ!と、すでに暮れかかっている西の空へ向かって慌ててシャッターを押したのが上の写真。な…

知らないうちに境界線が引かれる

例えば、指のささくれのように、体の皮のほんの一部が剥がれたとき、体と剥がれた皮の部分は連続していて、だからこそ、何かに触れると「痛い」と感じる。つまり、どこからが剥がれた部分で、どこからが自分の体に属しているのかが、あいまいな状態だ。しか…

ジャズシンガー 石野見幸

人は何か気になることができるとバランスを失い、自分の全体性を見失ってしまう。自分と戦うということは、この全体性を取り戻そうとする努力のことをいうだろう。2007年11月8日、永眠。その7月に、末期がんの状態でブルーノートのステージに立った…

三十三間堂のつくられ方

「一個人」という雑誌で京都の仏像を特集していて、その中に三十三間堂の千手観音菩薩像があった。(写真は「一個人」から)小学生の頃に一度連れていかれたことがあったが、そのおびただしい数の仏像を見て、他の寺の静謐な印象と比較すると、どこか日本的で…

バッファロー・ブルー

感光紙にスライドプロジェクターで投影してつくったバッファロー旧工業地帯の鉄橋下からの写真。私がアメリカで3年半生活した町だ。冬の寒さは半端ではない。マイナス40℃を記録したこともある。かつては鉄工場などで栄え、水運、鉄道貨物の中継地点として…

転身

グリッドフレームのクライアントは転身のタイミングの方が多い。新天地をめざすフロンティア精神に満ち溢れている方が多い。私たちグリッドフレームはいつも螺旋を描きつつ、上昇していこうという強い気持ちを持っている。私たちのような小さな会社に安定と…

アメリカで売れること

アメリカの大学で一緒に徹夜で建築模型をつくっていた仲間たちの名前をネットで検索してもほとんど出てこない。彼らは建築を続けているだろうか。アメリカでは、名前のバリエーションが日本ほど多くないから、検索で同姓同名がたくさん出てきて見つけにくい…