gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

2009-01-01から1年間の記事一覧

2009年をふりかえって

大晦日の買い物にスーパーへ行った。クリスマス前とは比べ物にならない人出で、レジの前には長い列。ようやく私が列の先頭になったところで、「はい、お次の方どうぞ」と小さな声が聞こえたような気がしたけれど、見回すとレジが空いているところはないよう…

産むという行為

妻のお腹はすっかり大きくなった。「仕事はほどほどにして丈夫な子を産んでね」という優しい声がいろんなところから聞こえてくる。妻を思う気持ちには感謝するが、妻も人生を賭けて空間をつくる仕事をしている。空間をつくる仕事もまた「産む」という行為で…

夜と霧 2

「・・・かなり感情が鈍磨した者でもときには憤怒の発作に見舞われる、それも、暴力やその肉体的苦痛ではなく、それにともなう愚弄が引き金になる・・・」 あまりのおびただしい肉体的な暴力に感情を殺されても、死なない感情がある。それは、精神的な暴力に対する…

散りそびれたイチョウ

例年、イチョウ並木では、年内に葉を落としつくす。年を越すイチョウの葉が見られるのは珍しい。今年は、並木の一本目だけがまだたくさんの葉を残している。今年もあと4日。年内に間に合うだろうか。もちろん、そんな目で見ているのは、時間の区切りを必要…

夜と霧 1

ユダヤ人の心理学者フランクルが、自らのナチスによる強制収容所体験を、心理学者の目でつづる体験記である。極限状態の人間がどのようにして生きていくのか?自分であればどうか?考えさせられる内容に満ち溢れている。 「・・・わたしは、医学者として、とに…

映画 カッコーの巣の上で

この映画は、20年以上前に一度観たことがあり、骨格を憶えていた。そのため今回は、精神病院の中でジャック・ニコルソン演じるマクマーフィーが騒動を起こすたびに、体制側の報復を過小評価している彼を悲しい目で見つめることになった。それにしても、マ…

満天の星

今までいちばんきれいな星を見たのは、内モンゴルの草原で寝袋で寝たときだ。そのとき私は、一日中自転車で走り続けた後で、もう草原の真ん中で寝るしかないくらい、疲れ果てていた。町を出て150キロ余り。次の町まで、どのくらいあるかもわからない。3…

設計という作業

クライアントの欲する空間のイメージが明確であるときほど、設計に苦労する。そのままつくってはならないし、そうでないものをつくってはならない、というダブルバインドに陥るからである。設計前の打ち合わせでは、できるだけ多くのキーワードを聞き出す。…

徹夜明け

プロジェクトの提案が続き、久しぶりの徹夜。追い詰められることは、辛さが半分、楽しさが半分。緊張の中にいることに、生きていることを実感する。不幸な性分だろうか。40時間ぶりに、おやすみなさい。

Boulangerie Melies

北山田のパン屋さん。1月9日にオープン。オーナーのパンへのこだわりは、映画人が映画をつくる姿勢に匹敵する。グリッドフレームも負けじと、凝りに凝ったお店。

映画 おくりびと

納棺師の所作の美しさが、この映画の最大の魅力だ。「死」というとらえようのないことを、穢れとして文化的に制度化した日本において、納棺師の仕事は「けがらわしい」こととされ、社会は彼らを差別する。主人公は、友人にも、妻にも、納棺師を辞めるように…

tempra&bar TAKA

大井町の天麩羅&バー。漆のような黒の光沢で仕上げたカウンターの下がり壁に青い光が反射する。青が争うと書いて「静」という字になる。いくつかの青い光を反射させることで、深い海のような静けさを実現した。パーティション・ボトル棚・扉には、格子戸を…

妻と私には似ているところがある。正確にいえば、「元々似ているところ」と「一緒に暮らす中で似てきたところ」がある。ひとつひとつをどちらかに分類することはできないが、暮らしているうちに後者は増える一方であることは間違いないだろう。夫婦の関係に…

インドカレーと右脳の関係

私は左利きである。今日の昼食はテイクアウトのインドカレーとナン。ちぎったナンをカレーにつけて口に運ぶのは左手だ。これは、ヒンズー教では許されないことだと聞いている。「不浄の左手」と呼ばれて、食事では一切使ってはいけない、と。多少、後ろめた…

譲らない女

その瞬間、言葉を失った。地下鉄の改札階と地上階を往復するエレベーターでの出来事。私は、改札階から乗り込み、エレベーターは地上階に着いた。扉が開いて降りようとしたら、扉の外のど真ん中に立っていた20代のOLさんと見受けられる女性と鉢合わせに…

壊れゆくかたち

私が「壊れゆくかたち」を初めて夢中になって探し回ったのは、15年も前のことである。すべての壊れてゆくものが、私の心を揺り動かした。そのとき、私は建築を学んでいた。つくることを学びながら、つくられるものよりも、壊れてゆくものに惹かれていた。昨…

映画 アラビアのロレンス

ロレンスは、砂漠に惹かれる理由を問われて、「清潔だから」と答える。砂漠の清潔さは、照りつける太陽がすべてを砂に変えてしまうことによる。そこでは、全てのかたちは消滅する。大量殺戮も例外ではない。そこで流された血も、時が経てば、まるでなかった…

コミュニケーション

妻とふたりで青山のセブンイレブンに立ち寄ると、レジのお姉さんが妻のお腹を見て、「少し前に来られたときには目立たなかったけれど、ずいぶん大きくなりましたね」とやさしい目で言ってくれた。東京のど真ん中でこのような言葉を聞くと、とてもホッとする…

政治のボランティア化

名古屋市の河村市長が自らの報酬を800万円に減らして、政治はボランティアであるべきだ、と市会議員の報酬を1200万円くらいに半減することを提示している。政治は家業としてやるべきではない、と。1200万円という金額は国民の平均年収よりも多い…

tempra & bar TAKA

大井町駅徒歩1分のお店である。中の様子は来週お伝えするが、この看板がその雰囲気を代表している。これまで大井町になかった雰囲気のお店を実現していると思う。昨日、オープン。

ネタバレの気持ち悪さ

今朝のテレビで、お台場にできたアウトレットモールの企画者がインタビューに答えていた。「なぜ、都心に程近い場所にアウトレットモールをつくったのか?正規店にダメージはないのか?」という質問に対して、彼はこういう内容を答えた。「物欲の継続時間は…

メリエスのカメラ

「映画」と関連付けたパン屋さん、メリエスのガラスに、ズラリと並んだ10台のカメラが取り付けられた。スタッフ004の力作である。(なぜかカメラよりも映り込んだ彼の顔の方が目立っている)店内には、10個の逆さまになった店の前の風景が映し出されてい…

ETCと一般

高速道路の料金所は「ETC」と「一般」に分かれている。ETC車は、週末はどこまで走っても1000円というサービスが始まって以来、目に見えて増え、高速道路ではETC車こそが「一般的」になってしまった。私の車はETC車だが、最近になって、このことが原因で危険…

落葉の雨

12月5日前後になると、外苑のいちょう並木には、変化が訪れる。それまで、少しずつ落としていた葉を、まるで決心したかのように、一気に落とす。一晩のうちに、ほとんどの葉を落としつくしてしまう。それは、まるで雨のようだ。あの木が雨のように葉を落…

学生は最大のライバル

先週、あるファッション系の専門学校で講義をする機会をいただいた。タイトルは「好きなことを仕事にする」。クリエイティブなことが3度の飯より好きだ、という人にしか当てはまらない講義内容だったと思うが、真剣に聴いてくれる学生が多く、率直にうれし…

中国で拘留される 4

赤峰4日目、今日が私にとってのタイムリミットだ。午前中、若い公安官がやってきて、「残念だけれど、これ以上、ここにいても、自転車は返ってこないよ」と言う。この状況下で、彼だけが自分の味方だった。その彼が状況は変わらないというのであれば、もう…

中国で拘留される 3

赤峰3日目の午後、公安官が3人で部屋へやってきた。みんな初顔だった。中堅クラスという感じだった。1対3で机を間にして向かい合って座った。調書をとる、という感じで書類を手に持っている。例によって、筆談で会話を交わす。3人は、昨日の若い公安官…

中国で拘留される 2

宿泊所の所定の位置に停めてあった自転車は、すでに持ち去られていた。しまった。昨夜のうちに、こっそりとこの町を抜け出していればよかった。「昨日はそんなことは言わなかったじゃないか!なぜだ?!」と、猛然と抗議したかったが、中国語はしゃべれない…

中国で拘留される 1

内モンゴルの草原を自転車で800キロ走った末、たどり着いたのは赤峰(ツーファン)という町だった。中国には、外国人旅行者が入ってはならない町が、3種類ある、と聞いたことがある。一つ目は、疫病が流行っている町。二つ目は、外国人用宿泊施設がない…

メリエス最終段階

北山田のパン屋さん「メリエス」の制作が最終段階を迎えている。http://d.hatena.ne.jp/yogosiurubi/20091108/1257685469壁一面に広がる、月のもともと芸術的すぎる顔を、どのようにパン屋さんにふさわしくアレンジするか、格闘してきた。もう一度、仕切り直…