gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

海外

バイエルン

ドイツでは城を訪ねればよかった。「ルートヴィヒ」を観て、城の建設を夢中で繰り返した王を知ったが、それがバイエルンの随一の観光資源である、と聞くと、王は未来のために仕事をしたのだ、とも言える。深い自然の中に、巨大建築を築くことが、いかに大変…

行動範囲

動きながら考えるタイプの人は、きっと行動範囲が広いのだろうね。海外には、そんなタイプの人が多いような気がする。ぼくは、動いているときは、あまり考えることができない。だから、動いているときは受動的に時を過ごす。そして、立ち止まって、動いてい…

らくがきの空間

千田泰弘さんの話によると、プラハに落書きや貼り紙で埋め尽くされた壁のあるバーがあって、そこがとても魅力的らしい。長い時を経て、姿を変えてきた壁。人間ではなく、壁に意志があるかのように感じられることの心地よさ。ぼくらがつくった店が、そんな店…

いつか遠くへ

大学に入ってからは、堰を切ったように海外を旅した。10年で30か国くらいを巡り、そこで自由の感覚を得た。もう、移動の必要がなくなったと20年近くも日本を離れずにいるけれど、本当だろうか。いつか、また遠くへ。今度は、家族と共に。 ← 創造性の連…

木立ち

木立ちという言葉を聞いて、ぼくが思い浮かべるのはアラスカのスティーブンス・ビレッジで撮ったこの写真だ。雪景色でモノが少ない中にいると、言葉の対応物がまるで抽出されたかのように現前する。だから、言葉を聞いて思い浮かべるものが、このときに出会…

パキスタン航空

1985年。Sさんによると、パキスタン航空の成田発北京経由カラチ行きの便は、K2のすぐ上を飛び越えていく絶景を見られる便として、世界の旅行者に有名だったらしい。ぼくは、何も知らずにその便に乗り、アフリカへ向かった。そのような幸運については、…

スラム街

スラム街という響きに、眠っていた心の何かが覚醒するのを感じる。直視することも、目を背けることも許されないもの。本当にくだらないけれど、本当に崇高なもの。ぼくが一番行きたくて、そして一番行きたくない場所。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:…

タイ

タイには、21歳の頃に1ヶ月ほど旅行したことがある。大昔のことだが、その空気感は今も鮮明に思い出せる。今回、あるプロジェクトでタイをテーマにデザインしてみよう、と試みたが、1ヶ月旅をした、というだけではなかなか難しい。ぼくが訪ねた地方は、…

アフリカから30年

ぼくが初めて海外を旅したのは、アフリカだ。ぼくにとっては、人生がそこからスタートした、と言ってもいいくらいの旅だった。そのときに、ケニア・ナイロビのDO DO HOUSEで一緒に過ごした日本人5人が30年ぶりに東京で集まった。記憶は驚くくらいに鮮明で…

ソウルの店で

20代のころ、ソウルへ立ち寄ったとき、小さな洋服屋へ入ったときの話。ジャケットを選んでいたら、店主が寄ってきて、しきりに話しかけてくる。といっても、英語で値段を連呼するだけだ。ぼくが店を出ようとすると、ぼくの袖を掴んで放そうとしない。引っ…

ユーコン河

極寒の地方を流れる川は、ぼくらの知る川とは著しく異なるだろう。20年以上前に訪れたアラスカのほぼ中央を横切るユーコン河のことを考えている。とはいえ、ぼくの知っているユーコン河は2月から3月の、カチカチに凍りついた川の上に雪が積もって、点々…

キプロス島

共存していたギリシア系とトルコ系の住民が、突然敵同士となって殺し合う。キプロス島にはそんな暗い歴史がある。ぼくが訪れたときは、空がどんよりと曇っている日が続いていた。建物の壁にある無数の銃痕を眺めて、ぼくはどんよりとした気持ちになった。高…

タンザニア

楽に旅ができるということは幸せなことかもしれないが、ぼくは観光地が整備されたケニア南部よりも、その南隣の、見るべきところは勝手に探して、という感じのタンザニアの方が好きだ。とはいっても、もう30年近く前のことだ。今はどうなっているか、わか…

ゲテモノ

いろんな国を旅すると、いろんなものを食べることになる。その中には、その国の人には失礼だが、日本人から見ればゲテモノと呼ばれるようなものもある。カブトムシの幼虫みたいなものを、豚の血を煮たスープに入れた料理を食べたり、あらゆる昆虫のから揚げ…

カラチ

二十歳の頃、初めて海外へ連れて行ってくれた飛行機はパキスタン航空のケニア・ナイロビ行きで、途中トランジットで、パキスタンのカラチに一泊するものだった。だから、初めて海外で一日を過ごしたのは、カラチである。飛行機会社がとったホテルに連れてい…

アフリカ

1985年のアフリカ。写真はケニアのマサイマラ国立公園。どうやら、この一本のアカシアは、ほぼこのままのかたちで今も存在しているようで、いろんな人の写真に出てくる。当時、アフリカの飢餓がよく日本の新聞に載っていた。その状況は、どうやら現在も変わ…

キナバル山

ボルネオ島のマレーシア・サバ州にあるキナバル山に登ったことがある。山頂付近は、溶岩が固まってできているそうだが、色のない不思議な世界が広がっている。写真のようなシャープなかたちが印象的で、金属を思い出させる。山麓は生命に溢れるジャングルな…

イルカ

過去の船旅で、イルカの群れが船に寄ってきたことが数回ある。いずれも乗客は甲板に出て、はしゃいでいたのを思い出す。イルカは、乗客に向かってサービスするかのように高く跳ねた。歓声が上がった。イルカほど人なつっこい野生動物は他にいないだろう。動…

モンゴルの馬

地平線に360度囲まれた草原。その中心で太陽の方向を見ながら、ひたすら自転車を漕ぐ。東へ。東へ。2日後には町にたどり着くだろう。 東の地平線の一点に、黒い点が現れる。点が少しずつ大きくなってくる。なんだろう?ドドドドドドドド・・・、大地の声が…

透明人間

よく一人で旅に出かけては、旅先で誰にも興味を持たれず、一日中誰とも会話をしないことがあった。そんなときは、まるで自分が透明人間になったような気持ちになった。何がうれしくて、私はわざわざここにいるのか?自問する日々。そして、それが一週間も続…

各国の平均寿命

私が初めて行った外国は、アフリカのケニアとタンザニアである。昨日、世界の平均寿命を調べてみたら、ケニアは54.2歳、タンザニアは55.4歳であった。ということは、私がそのときに出会ったほとんどのケニア人が、すでに平均寿命を過ぎていることになる。そ…

ハチの巣

タイの東北部コンケーンのホテル。部屋は1室を残して満室状態だ、とロビーの男性は言った。ラッキー!とばかりに、残りの1室に決める。部屋に入り、一瞬ベッドに横になってから、シャワーを浴びようとシャワールームの扉を開ける。スズメバチが3匹ほどシ…

緯度の低い地方の人々

学生時代以来、緯度の低い地方を旅することが多かった。今、改めて地域の気候を思い出すと、熱帯雨林か、砂漠か、という両極端な地域を旅したことになる。熱帯雨林は自然の恵みが豊かであるがゆえに、人々はあまり移動を必要としない。文明を受け入れない未…

モノクロムの風景

デンマークの北方の海辺。空・太陽・海・浜辺。目の前にはその4つしかない。そのうえ、色がない。いや、よく見るとほのかに太陽の光が赤みがかっているか。そのくらいの、シンプルな世界。目的もなくデンマーク人の教授を訪ねたら、彼がここへ連れてきてく…

13日の金曜日

今日は13日の金曜日。子供の頃の国民的ドラマ『太陽にほえろ!』では、松田優作のジーパン刑事をはじめ、数々の若手刑事が、13日の金曜日に殉職した。これらが影響したのか、私は10代の頃、キリスト教徒でもないのに13日の金曜日を怖れていた。その…

静かに笑っている

この季節にバッファローのダウンタウンへ行くのはきらいじゃない。こんな建物は、静かに笑っている。まるで、死者の側にいるかのように。お墓に行くのが平気だったら、バッファローのダウンタウンを歩くのもきっと平気だ。 ← グリッドフレームのHPはこちらで…

木の葉と固有周期

あらゆる物体には、固有周期と固有モード(揺れるときのかたち)というものがあって、ある外力を受けたときに、その外力に固有周期と同じ周期の振動が含まれていれば、共振を起こして、その周期で固有モードのかたちを描きながら激しく揺れる。固有周期と固…

モロッコの壁

モロッコの海辺の町タンジェ。スペインからジブラルタル海峡を船で渡るとこの町に着く。その町にある旧市街の壁の写真である。このような「汚しうる美」を求めて、旅をしていた頃。世界は発見に満ちていて、どこへ行くのも楽しみだった。今は、その楽しさを…

鉛直性

ケルン大聖堂の塔の接写である。これほどまでに天に向かう気持ちが強いのか、とその鉛直性に圧倒される。1248年から1880年まで実に600年以上かかって建てられた。その間の国家の盛衰、政治的背景、技術革新など様々な歴史がこの大建築に凝縮されているのだろ…

ジョン・アーチア教授

ニューヨーク州立大学へ入学したとき、いちばん最初に出会った建築学科の教授がジョン・アーチア(John Archea)教授だった。彼は心理学が専門の先生だったが、日本の歴史などの学問的知識も、私よりも遥かに豊富だった。最初のプロジェクトはシェークスピアの…