gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

満天の星

今までいちばんきれいな星を見たのは、内モンゴルの草原で寝袋で寝たときだ。

そのとき私は、一日中自転車で走り続けた後で、もう草原の真ん中で寝るしかないくらい、疲れ果てていた。町を出て150キロ余り。次の町まで、どのくらいあるかもわからない。

360度地平線の草原で横になるということは、自分は大地の中心にいる、と感じる以外どんな捉えようがあろうか。

大地の中心にいて、空に向かい合う。満天の星は、私に向かって降ってくる。誰一人として、私がここでこうしていることを知らない、この私に向かって。

遠くで、野犬の群れの吠える声が聞こえた。その声がだんだんと大きくなってくる。私は、野犬に襲われて、ここで死ぬのかな、と思った。

いちばん武器になりそうな空気入れを握り締めた。それ以外に何もできることはない。

今、このときのことを思い出すと、なぜか恐怖の感覚が抜け落ちていたような気がする。実際、私はそのまま、すやすやと朝まで寝てしまったのである。

あの抜けるような星空が、私を勇気づけてくれたのかもしれない。そう、私はあのとき、大地の中心にいて、空の中心を見上げていたのだから。