gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

中国で拘留される 1

内モンゴルの草原を自転車で800キロ走った末、たどり着いたのは赤峰(ツーファン)という町だった。

中国には、外国人旅行者が入ってはならない町が、3種類ある、と聞いたことがある。一つ目は、疫病が流行っている町。二つ目は、外国人用宿泊施設がない町。三つ目は、軍事基地がある町。

草原を走っている途中、二つの町で宿泊したが、そこは、外国人用宿泊施設がない町だった。そんな町では、中国人用宿泊施設に特別に泊めてもらうことができた。一応、公安が調べに来るが、どちらかといえば好意的で、「頑張れ」という意味で、私のふくらはぎを思いっきり、パーンとたたいては笑って去っていく。何も罪に問われることはなかった。そこには、牧歌的ともいうべき空気が漂っていた。

しかし、赤峰の空気は今までの町とは違った。その空気は、なにか暗くて、張りつめたものを感じさせた。そこは、三つ目のカテゴリー、軍事基地がある町だったのだ。町へ入った時点で、そのことには気づいていた。軍隊が通りを行進していたからだ。だが、その日、150キロ以上のでこぼこ道を一日中漕いできた体は、ここで休息を取ることを求めていた。他に選択肢はなかった。

とりあえず、中国人用宿泊施設を探して、泊めてもらうことにした。

宿泊施設の主人は、私を温かく迎えてくれたが、その後、すぐに公安がやってきた。そのときの私は23歳。公安官もほぼ同じくらいの年の青年だった。彼は、ひととおり取調べをして、笑いこそなかったが、ここまで自転車でやってきた外国人に敬意を払ってくれているようで、友好的な姿勢を感じた。無事に、翌日にはこの町を出られそうだった。安心して、深い眠りに落ちた。

しかし、次の朝、事態は一変していた。昨夜訪れた公安官が「自転車を没収することになった」と告げにやってきたのだ。

(つづく)