gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

クリストファー・アレグザンダー

彼が書いた「パターン・ランゲージ」という本は、ずっと本棚に眠っている。正直、苦手な本である。まず、読み進める気にならないのは、細分化したパーツから、全体を組み上げていく、という思考方法がぼくには苦手だからだろう。全体が先になくては、部分に…

モモ 絶望と恐怖の極から

モモは、世界の中でたったひとりぼっちになって、とうとう灰色の男たちに囲まれる。そこで、彼女が攻勢に転じるのは、誰の力でもない、極まった状況の中で溢れてきた勇気だ。それは、それぞれの人間の心の中にある。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グ…

モモ

何十年ぶりかに、ミヒャエル・エンデの「モモ」を読んでいる。陽向に読み聞かせをするためだ。モモは、廃墟に住んでいる。いきなり、ぼくの仕事そのものに関係している。モモは、積極的に何も言わないが、他人の言うことに対し、熱心に耳を傾けることができ…

ホッツェンプロッツ

「大どろぼうホッツェンプロッツ」という子供向けのドイツの本を毎日一章ずつ陽向に読み聞かせをしている。完結編である第3巻で、大どろぼうで大悪党のホッツェンプロッツは、どろぼうを辞めてまじめに生きようと決心するが、周囲はなかなか信じてくれない。…

地中の虹

http://d.hatena.ne.jp/yogosiurubi/20151228木下龍也の短歌を紹介したサイトに、上記に書いた歌のタイトルとして「地中の虹」という言葉があった。「見えないものを想像する」というとき、あまりにも鮮明な答えで、この言葉を目にしたときから頭の中にイメー…

短歌

虹 土葬された金魚は見ているか地中に埋まるもう半輪 木下龍也さんという27歳が書かれたものだそうだ。短歌が空間イメージを喚起する力。いろんな歌を探してみたいと思う。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グリッドフレーム ← コラボで実験しながらつ…

趣味判断 メモ

カントは趣味判断を快・不快あるいは快適から区別している。快適は個別的であるが、趣味判断は普遍的であることを「要求」される。つまり、他人がその判断を受け入れるようなものでなければならない。(「トランスクリティーク」柄谷行人p.66)他人がその判断…

死刑囚の俳句

都築響一「夜露死苦現代詩」に、死刑囚の俳句が紹介されている。綱 よごすまじく首拭く 寒の水和之という俳号の囚人が、31歳で死刑が執行される朝に詠んだ句だそうだ。句を詠むという行為は、彼の心の水面の波を鎮め、ついには鏡に変えたのだろうか。その静…

「夜露死苦現代詩」 都築響一

「夜露死苦現代詩」(都築響一)という奇妙な本がある。というか、この人の写真集「TOKYO STYLE」といい、とにかく普通ではない。とはいえ、書いてあることが奇妙というわけではない。この人の視線の先にあるものが奇妙なのだ。奇妙と書いたが、奇妙こそが真…

本 アルケミスト パウロ・コエーリョ著

アルケミストとは錬金術師のことで、鉛などを金に変える術を身に付けた人。20年くらい前に友人に勧められて読んだが、今回、就職希望者の中に「私はこの本が好きです」と言って、本を置いていった人がいて、久しぶりに読んだ。懐かしい本だ。自分が、宝物…

本 世界共和国へ 4

「国家は政府とは別のものであり、国民の意志から独立した意志をもっていると考えるべきです。」(p.113)国民が国家に反対する意志を持ったとしても、国家は国家自身の意志で動く。それは、国家は内部に対する以上に、外部(他の国家)に対して存在するものだ…

本 世界共和国へ 3

柄谷行人は、資本主義の終わりが近づいている、という。そのときに、どのような社会がやってくるのか?私たちには想像ができていない。私は「世界共和国へ」を真剣に読んだ。グリッドフレームはどこへ向かうべきかを考えるためのヒントがあるだろう、と予想…

本 世界共和国へ 2

私が柄谷行人を自分の中で特別な位置においたのは、「探究Ⅱ」を読んだときだった。彼は、ある人を見るときに、「特殊性−一般性」の回路に対して、「単独性−普遍性」という回路があると考えた。前者は、「日本人」「背が高い」「頭がよい」など言葉で説明でき…

本 世界共和国へ 1

書かれたものについて、自分の言葉で書くことは、生半可なことではない。特に、自分よりも圧倒的に考えている人の書いたものに対して、何を語ることができようか。柄谷行人を尊敬する人は多いだろう。そして、この人よりも自分の方が考えている、もしくは、…

死者の生命@本当の戦争の話をしよう

死者はストーリーの中で何度でも甦えらせることができる、と作者はいう。幼い日に死んだガールフレンドも、戦争で死んだ仲間も、戦争で殺してしまった敵も。アメリカ兵たちは、身の周りの死を、ジョークによって乗り越えていく。死者に「それ了解」などと言…

私が殺した男

ティムは、戦争で自分が殺してしまった男を、呆然と見つめ続ける。彼の生きてきた人生と、これから生きようとしていた人生を想像しながら。何度も何度も同じところを見返す。感情は失われ、まるでビデオカメラになったかのように見続ける。それを止めること…

本当の戦争の話をしよう 2

「戦争において君は明確に物事を捉えるという感覚を、失っていく。そしてそれにつれて何が真実かという感覚そのものが失われていく。だからこう言ってしまっていいと思う。本当の戦争の話の中には絶対的真実というものはまず存在しないのだと。」戦争に行っ…

本当の戦争の話をしよう 1

ティム・オブライエン作。村上春樹訳。私も含めて、戦争を知らない世代が日本の人口の大多数を占めるこの時代に、戦争を知る人々は、何を語りたいだろうか。この本は、ベトナム戦争で歩兵として従軍したアメリカ人が書いたものである。それがどの戦争にも当…

中国人について

ベンヤミンが「広州の劇場の火事」というタイトルで書いている中国人の姿は、現代の中国という国を考えるのに役に立つ。その火事は1845年に起こった事件なので、江戸末期の日本人について書かれたものを読んで今の日本を語るようなものではあるが、それでも…

カリオストロ 補足

「観察の才と人間を見る目は、多くの場合、確乎たる信念や正しい立場といったものよりも、ずっと価値がある」ベンヤミンは、まさに「観察の才」の人なのだろう。「確乎たる信念や正しい立場」を疑うことから彼の仕事は始まったのだろうから、上記のような結…

カリオストロ

「ベンヤミン 子供のための文化史」の中の一節で、18世紀の大詐欺師カリオストロについて書かれている。「かれのもった圧倒的な力は、どこから由来するのだろうか。(中略)多くのひとが信ずるところによると、それはかれの視線のせいである。かれの目に凝…

いまわの花 石牟礼道子

水俣病の8歳の女の子がいまわのきわに桜の花を見て、唇を動かす。 なあ かかしゃん かかしゃん しゃくらのはなの 咲いとるよう いつくしさよ なあ なあ しゃくらのはなの いつくしさよう しゃくらの なあ かかしゃん しゃくらはなの 母親は、娘の眸に見入っ…

TOKYO STYLE

空間のデザインを練るときに、ときおり散歩に出るような気分でこの本を開く。漠然となにかのヒントを探すとき、散歩に出る。外の世界が、自分のためになにかを用意しているわけもない。「そのまんま」であることのありがたさ。そんなありがたさがこの本には…

アジェのパリ 大島 洋

「だらだらとした文章」と書いては失礼にあたるだろうが、まさにそこにリアリティが感じられて、いつのまにか、著者になり代わって重い写真集を抱えてパリを歩いている自分がいる。20のころから始めた一人旅はこのような旅だった、という懐かしさもあるか…

カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー

この拠り所のない不安な感じは何だろう?キリスト教的世界、と中学生時代にドストエフスキーを読んだ柄谷行人が書いていたが、その世界はこのように不安げな世界なのだろうか。コンテクストが読めない、信じられる登場人物がいない小説は、読み進めるのに苦…

国木田独歩 忘れえぬ人々

心の中の風景に出てくる人々は、内面化されているがゆえに「忘れえぬ人々」である。よって、一旦話をして、その人の自我を感じ取ると、すでに内面に収まらない存在となり、逆説的に、「忘れえぬ人々」になりうる資格を剥奪されてしまう。例えば、ミレーの「晩…

夜と霧 6

強制収容所から解放されることをひたすら願い続けて、その願いをようやくかなえられた人びとは、みな幸せな人生を送ったのだろう、と考えていた。しかし、解放後も、心の平和を取り戻すには、大変な困難が待ち受けていたらしい。「とくに、未成熟な人間が、…

夜と霧 5

「ラテン語の『フィニス(finis)』には、よく知られているように、ふたつの意味がある。終わり、そして、目的だ。(暫定的な)ありようがいつ終わるか見通しのつかない人間は、目的をもって生きることができない。ふつうのありようの人間のように、未来を見すえ…

夜と霧 4

「もういいかげん、生きることの意味を問うことをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ。生きることは日々、そして、時々刻々、問いかけてくる。」強制収容所の現実は、自分に何を期待しているのか。フランクルは、自分側か…

夜と霧 3

「人間の苦悩は気体の塊のようなもの、ある空間に注入された一定量の気体のようなものだ。空間の大きさにかかわらず、気体は均一にいきわたる。それと同じように、苦悩は大きくても小さくても人間の魂に、人間の意識にいきわたる。人間の苦悩の『大きさ』は…