赤峰4日目、今日が私にとってのタイムリミットだ。
午前中、若い公安官がやってきて、「残念だけれど、これ以上、ここにいても、自転車は返ってこないよ」と言う。
この状況下で、彼だけが自分の味方だった。その彼が状況は変わらないというのであれば、もうあきらめるしかないのだろうか。
私はしばらく黙って考えていたが、「午後のバスに乗る」と答えた。
幸い、パスポートには傷はつかなかった。部屋のドアの向こうには、監視はいたり、いなかったりで、いないときに腹が減ると、勝手に外へ出て、屋台で飯を食ったりした。食っているところを、公安官に見つかると、彼は私が食い終わるまで待ってくれて、それから、部屋へ連れ戻された。
拘留と言えば、拘留だが、それなりに、大事に扱ってくれた。もちろん、何も悪いことをしているわけではないのだから当然だが、私が行ったいろんな国では、立場を利用して、すぐに拷問をしたり、金を要求したりする者たちがたくさんいたことを考えると、紳士的な国だったと言える。
バスは満員だった。この国の交通機関は、どこも満員だ。なぜ、こんなにたくさんの人が移動するのだろう。軽くなった荷物にどこか心細さを憶えながら、そうしているうちにも、バスはどこにあるかもわからない駅にたどり着くことだろう。