gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画

映画 アイス・ストーム

1997年。アメリカ。外からはなんの問題もない幸せな家庭が、もろく崩れていく様態を描く。近所づきあいの中に、性の問題が入り込むと、関係は泥沼化するだろう、と直感できる。「岸辺のアルバム」との類似性がよく指摘されるそうだが、あれは一家族の問…

映画 ロゼッタ

1999年。ベルギー。監督はダルデンヌ兄弟。ひたすら、まっとうに生きるために職を求め続けるロゼッタ。現在の悲惨な環境から抜け出すための、必死さが全身から伝わってくる。ついに、唯一の味方である友人を裏切って、彼の仕事を我がものにする。「人間…

映画 アフガン零年

2003年。アフガニスタン、日本(NHK)、アイルランド、イラン、オランダ。タリバン政権下で、女性がどれだけ自由を奪われて生きていたのか、を描く。これほど社会が無慈悲でいられるのか、と思うが、権力側からの論理のみで国が成り立つ時代には、多かれ少…

映画 みなさん、さようなら

2003年。カナダ・フランス。父親の死に際に、家族が集まり、息子は父親の遊び仲間、浮気相手なども呼び集めて、愉しい最期を迎えられることに全力を尽くす。父親の病床では下ネタが飛び交う。体が弱りきった後、最期は自然死を待たず、集まった全員が注…

映画 息子のまなざし

2002年。ベルギー。ダルデンヌ兄弟監督。職業訓練所で木工を教える教官のもとに入所してきた16歳の少年は、5年前に息子を殺した「あいつ」だった。揺れ動く心、自分にも理解できない、そして制御できない自分の行動・・・。向き合うことはできない。けれ…

映画 懺悔

1984年。ソ連。旧ソ連時代に、スターリンの恐怖政治をモチーフに描かれたため、1987年まで公開されなかった。あがた森魚のとある歌に、「私が望んだものはこんなものではなかったが」という歌詞がある。権力者が、自身を守るために大勢を殺してしま…

映画 ヤンヤン夏の想い出

2000年。エドワード・ヤン監督。多くを考えさせる力のある映画だった。この映画について、じっくりと文章を書きたいと思い、そのタイミングを待ったが、結局なかなかそんな時間もつくれないで1週間以上が過ぎた。このままでは記憶が薄れてきそうなので…

映画 三人の女

1976年。ロバート・アルトマン監督。シシー・スペイセクというホラー映画「キャリー」で血まみれの主人公を演じた人物が3人の一人だ。この映画の後も彼女はたくさん映画に出演したようだが、「キャリー」の印象が強すぎて、ぼくにとっては、他をイメー…

映画 そして、私たちは愛に帰る

2007年。ドイツ・トルコ・イタリア。ドイツとトルコを舞台に描かれる、3組の親子の物語。3組の親子が互いに複雑にからみあう糸のように関係をなし、時に互いを救い合う。この6人のうち、2人が死ぬことになるが、その死はあたかも犠牲祭のいけにえの…

映画 田舎の日曜日

1984年。フランス。20世紀の初め、自然豊かなパリ郊外に老画家が家政婦と共に暮らしている。ある初秋の晴れた日曜日、いつもの様にパリから息子夫婦が三人の孫を連れてやって来る。そこへ不意に、自慢の娘イレーヌが久しぶりに立ち寄る……。全体が些細…

映画 メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

2005年。トミー・リー・ジョーンズ監督。メキシコからの不法入国者を取り締まる国境警備隊員マイク。彼は、誤ってひとりのメキシコ人メルキアデスを射殺してしまうが、人目がつかない場所へ彼を埋めて、その事件を隠蔽しようとする。しかし、野生のジャ…

映画 過去のない男

2002年。フィンランド。アキ・カウリスマキ監督。冒頭から独特の空気を感じた。すぐに、5年前に観た「街のあかり」を思い出した。http://d.hatena.ne.jp/yogosiurubi/20100305/2006年につくられた「街のあかり」は、淡々と負け続ける男が主人公だっ…

映画 Once upon a time in America

1984年。ロバート・デ・ニーロ主演。ぼくが大学へ入学した年にヒットした映画だ。もう、ずいぶん前のことのように感じる。二重に「Once upon a time」という気がする。禁酒法時代のニューヨークのギャングたちの抗争。逃げるようにニューヨークを離れた…

映画 ANGEL-A

2005年。リュック・ベッソン監督。借金の返済期限が48時間後に迫ったのに返すあてのないアンドレ。返せなければギャングに殺されてしまうかもしれず、進退窮まったアンドレはアレクサンドル3世橋に向かい、セーヌ川へ飛び込もうとする。しかしその時、長…

映画 コンスタンティン

2005年。アメリカ。この世は、天国・人間界・地獄の3つの世界に別けられている。それぞれの住人が別の世界へと自由に行き来することを禁じられることで、均衡が保たれている、という。だが、地獄界から人間界へ悪魔が侵入していることに気づいた悪魔祓い…

映画 ペパーミントキャンディー

2000年。イ・チャンドン監督。1999年、主人公は列車の前に立ちはだかり、自殺する。20年の時が、純粋だった若者をどのように変えていったか、を数年ずつ遡りながら辿っていく。遡行する、とは、原因を求めることだ。結果のみを見せられて戸惑う観…

映画 夢売るふたり

2012年。西川美和監督。5年間二人でやってきた小さな居酒屋を火事で失った夫婦が、もう一度店を持つために、数々の結婚詐欺を企てる。きっかけは酔った勢いで浮気をした夫に対する妻の嫉妬だった。妻は夫に与える罰として、結婚詐欺をやらせることを選…

映画 CUT

2011年。アミール・ナデリ監督(イラン)。西島秀俊が借金返済のために、ひたすら殴られ続ける映画。映画の8割は、殴られて腫れ上がった顔を見続ける。商業主義の映画はクソ映画だ、みたいなセリフを拡声器を持って連発する主人公が浮いている。主人公が…

映画 下妻物語

2004年。深田恭子主演。この映画よりも前に、深夜のラジオで深田恭子の番組を聴くのが当時のスタッフとの間でブームになっていたことがある。いつもそれを聴きながら大笑いした。とても不思議な天然の雰囲気を醸し出していたのが懐かしい。そのキャラク…

映画 重力ピエロ

2009年。「見て。あのピエロの顔。あんなに愉しそうに笑ってる。あんなに愉しそうにしている人が落ちるわけないじゃない。落ちたって、きっと怪我なんてしないわ。」空中ブランコのピエロを見上げながら、美しい母が言う。何があっても笑って生きること…

映画 ミニスキュル

2014年。フランス。家族3人で初めて映画館に入った。この映画にはセリフがない。登場するのは、虫たちで、笛のような音を出してコミュニケーションを交わす。虫たちはちょうどよくデフォルメされていて、背景の実映像に融け込んでいる。フランスらしい…

映画 バッチギ

2004年。井筒和幸監督。差別をされる者と差別をする者。この両者は、逆差別という言葉で表されるように、簡単に入れ替わる。そして、争いが起こる。だが、いつの世も、この2通りのみに分かれることは決してない。必ず、差別をしない者がいるからだ。あ…

映画 情事 セカンド・ラブ

2007年。韓国。舞台はニューヨーク。韓国人の移民社会。庭で盛大なパーティが開かれるような豪邸に住む弁護士家族。敬虔なカソリック信徒。この家の一人息子に、青い目の妻が嫁いでくるが、長い間、子供に恵まれない。息子は未来に光を見い出せなくて、…

映画 ジョゼと虎と魚たち

2003年。池脇千鶴・妻夫木聡主演。目の前にいるのに、向こう側が透けて見えるような二人の関係。別れが来ることを知っている同士で過ごす日々は、静かに波が寄せる海のように、すべてがまぼろしのように輝いて見える。その延長にある静かな別れの後に泣…

映画 まぼろし

2000年。フランス。中年夫婦が南フランスへ休暇旅行中、浜辺で最愛の夫が消える。自殺か、事故か、家出か・・・。妻は家の中に夫のまぼろしをつくり出し、一緒の生活を続ける。夫を信じたい気持ちは、夫の裏切りへの(無自覚な)疑念と裏腹で、彼女は夫のまぼ…

映画 イン・ディス・ワールド

2002年。イギリス。パキスタンのペシャワールあるアフガニスタンからの難民キャンプ。そこから出て、ロンドンをめざす若者二人。実際のアフガニスタン難民二人を主役に立ててつくられたこの映画は、ドキュメンタリーのようにリアルだ。この世界の中に国…

映画 25時

2002年。アメリカ。スパイク・リー監督。ニューヨークの麻薬ディーラー、モンティが逮捕され、7年の判決を受けた。彼の収監までの25時間を描く。取り返しのつかない過去を乗り越えて、未来へ向かって生きるために、彼は何をするのか?収監・逃亡・自…

運動靴と赤い金魚

1999年。イラン。お使いの途中で妹の靴を失くしてしまった少年アリ。貧しい家計では新しい靴は買ってもらえない。失くしたことは親には内緒で、妹と自分の靴をシェアすることに・・・。イランの庶民の暮らしぶりが分かり、楽しい。子供たちだけで問題を解決…

映画 ある子供

2005年。ベルギー・フランス。バックに流れる音は、いつも都会の喧騒。登場人物に対して、無関心な音の洪水。若いカップルに子供が生まれた。おめでとう、と言ってくれる人は誰もいない。夫は、貧困の中、盗みで生きてきた。知り合いといえば、その犯罪…

映画 八月の鯨

1987年。アメリカ。リンゼイ・アンダーソン監督。主演が91歳のリリアン・ギッシュ。登場人物のほぼすべてが老人、という映画。海の見える丘の上の小さな家に静かに暮らす老いた姉妹の生活を描いている。女優たちの一挙手一投足に目が離せなくなってい…