gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

回想

買い食い

私が子供の頃は、いたるところに、たこ焼きやら、大判焼きやら、やきとりやら、店頭で買える食べ物屋があって、習い事などの行き帰りに買い食いをするのが楽しみだった。歩きながら食べるのが、うまい。今でもそう思う。しかし、最近は、行儀が悪いからか、…

ファンタオレンジ

小学生の頃、毎日通っていた柔道の道場。練習が終わると、のどがカラカラで、必ず近くの店でファンタオレンジ500mlを一気に飲み干した。しかし、いつも少し飲み足りない気持ちだった。ある日、私はファンタオレンジのプールを泳いでいた。飲んでは泳ぎ、…

道案内

目的地へ向かうとき、人に道を訊くのがきらいだ。時間さえあるならば、迷っても自分で探す。正直、迷子になるのは嫌いではない。迷子になりたい、という願望すらあるくらいだ。本屋へ行っても、できれば探している本は自分で探したい。探し回る時間ほど、楽…

魁傑

朝青龍の引退で、相撲への興味はさらに薄れてしまった。ものごころついて以来、北の湖、千代の富士、貴乃花、朝青龍と主役が交代したが、ちょうど情報化社会が発展する時期と重なり、かつては天にいた大横綱はいまや地へと堕とされた。私が少年の頃に憧れた…

手の力

幼い頃、祖父母の家でお腹が痛くなると、祖母がリューマチにかかった不自由な手をかざしてくれた。少し温かくなって、痛みが消えたような思い出がある。祖母は、その頃の私にとって、魔法使いのおばあさんのように、不思議な力を持っている人であった。先日…

人造人間 キカイダー

小学校の低学年の頃、キカイダーはテレビに登場した。2歳上の姉が、「頭にゴミが入っとーよ」と言って、ケラケラ笑っていたのをよく憶えている。頭の中の機械がガラスやアクリルの向こうに見えているという、最近はごく当たり前になったデザインの先駆けだっ…

闘え!レッドタイガー

中学生だったか、高校生だったか、夕方何となくテレビを観ていたら、「闘え!レッドタイガー」というヒーロー番組が始まった。仮面ライダーの亜流ヒーローはたくさんいて、さすがに食いついてみるような年でもなかったのに、これを観た、という記憶が何十年…

柔道を始めた理由

小学2年生になるとき、父の転勤で隣の県へ転校した。都会から田舎へ移ると、人の種類もちょっと変わってくる。むろん、どちらがいいというわけではない。その後も転校を繰り返したおかげで、子供の頃にいろんな人間を見ることができたことは結果的によかった…

霊能者

ずいぶん前の話だが、いわゆる霊感の強い人に出会ったことがある。その人は、自分に語りかけてくる目に見えない誰かの言葉を解釈し、私の未来を予言してくれたりした。私はその予言を信じるわけでも疑うわけでもなかった。しかし、それは自分の中に言葉とし…

干し柿

干し柿の生産農家に自動皮むき器が重宝されている、という記事がアサヒ・ドットコムに載っていた。干し柿自体をなかなか目にすることがないのに、そのような機械の需要があることに驚いた。子供の頃、九州の田舎では、干し柿をつるしている家が普通だった。…

満天の星

今までいちばんきれいな星を見たのは、内モンゴルの草原で寝袋で寝たときだ。そのとき私は、一日中自転車で走り続けた後で、もう草原の真ん中で寝るしかないくらい、疲れ果てていた。町を出て150キロ余り。次の町まで、どのくらいあるかもわからない。3…

不思議の国の所ジョージ

我らが中学校の中庭に、ジーパン・革ジャン・サングラスにリーゼントのあんちゃんが出現した。当時、その出で立ちと言えば、所ジョージというイメージがあった。なんとなくばっちり決まっていないのも、いかにも彼っぽい。所ジョージがまだ売れ始めの頃だっ…

カラス

昨日、ベランダで洗濯をしていると、私に気づかなかったのか、カラスが至近距離に舞い降りてきた。彼は、そこにある植物によほど興味があったようで、私が追い払おうと2メートル以内に近づいても、一瞬気づかないくらいだった。近くで見ると、カラスのくち…

京都・吉田山「白樺」の赤い扉を初めて開けたとき

京都で学生だった頃、夏の旅行先で知り合った京都人に教えてもらったバー「白樺」。描いてもらった地図は何ヶ月も放置されていた。このまま行くことはないかもな、と時折その地図を横目で眺めては思った。しかし、少し寒い季節になって、身の回りに哀しい出来…

大事な闘いの前

子供の頃、柔道の話。団体戦の勝ち負けが自分の試合にかかっているときなど、大事な試合は、試合直前になって、傍から自分を眺めているもう一人の自分を感じることがあった。いつももう一人の自分は、自分は非力なんじゃないかと疑問を抱かせる役割を担って…

巨樹の最期

老木のことを考えていた。山形県のある森にある巨樹のことだ。すでに何百年も生きてきた。老木は横へ伸びる太い枝を支えるには限界のときを迎えていた。秋が来て、そして冬が近づいてくると、枝についた葉をすべて振り落とさねばならない。葉が残って、そこ…

夏休みの宿題

小学生のころ、夏休みもこの時期になると宿題のプレッシャーが重くのしかかってきていた。そして、いつも最終日まで宿題をやっていた。そんな子供だったから、中学生の冬休みに宿題を最初の3日で終えたときには随分誇らしげだった。それから新学期まで、悠…

花火

小学生の頃、祭りといえば花火大会だった。夕暮れ時、家族4人で田んぼ道を30分ほど歩いて、宝満川の河川敷へ。ビニールを広げて、草むらにすわりこむ。周囲もたくさんの親子連れ。知っている顔もたくさん見える。りんご飴、焼きもろこし、金魚すくいなど…

砂浜で夜明けのコーヒー

大学時代、深夜ふと思いついて、同級生Sと二人でボロ車に乗って京都を出発した。野郎二人の深夜ドライブである。目指すは海だ。どこの海というわけではない。車に積んだのは、サイフォンとアルコールランプとマッチ一箱。そして、お気に入りのコーヒー豆と…