gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

砂浜で夜明けのコーヒー

大学時代、深夜ふと思いついて、同級生Sと二人でボロ車に乗って京都を出発した。野郎二人の深夜ドライブである。

目指すは海だ。どこの海というわけではない。車に積んだのは、サイフォンとアルコールランプとマッチ一箱。そして、お気に入りのコーヒー豆とコーヒーミル。でも、その頃、どの豆がお気に入りだったかは忘れてしまった。

大阪で海沿いの道路に出て、それを南下する。コーヒーが飲みたくなるような海辺を探して・・・。

やがて夜が明けてきた。僕らはもう和歌山にいて、砂浜の横を走っている。そろそろ車を止めよう。

コンビニで500mlのミネラルウォーターを一本買って、浜辺で車の外へ出る。少しの間、ぼーっと海を眺め、背伸びをしたりする。

それから、コーヒー豆を挽いて、サイフォンの上の容器に粉を入れ、水を下の容器に注ぎ入れ、車の屋根にセットする。マッチを擦って、アルコールランプに火をつけ、水の沸騰を待つ。ほとんど無風。問題なし。

その間、Sは眠そうに海を見ている。

沸騰すると、お湯は上の容器へ上ってくる。全部上がってしまうとボコボコと音がして、コーヒーの粉と混じりあう。その瞬間にコーヒーの香りが周囲に広がる。スプーンで数回かき回したら、アルコールランプを消す。あとは、下の容器にある空気の温度が下がって収縮し、コーヒーが下の容器に返る様子を眺めていたらできあがり。

カップに注いで、Sへ渡す。僕のサイフォンは一人分だったから、もう一度同じことを繰り返し、自分の分をつくる。

「なんかいいね」

飲み終えたら、帰途に着く。朝陽を浴びながら。京都までは長い道のりだ。