gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

巨樹の最期

老木のことを考えていた。山形県のある森にある巨樹のことだ。すでに何百年も生きてきた。

老木は横へ伸びる太い枝を支えるには限界のときを迎えていた。秋が来て、そして冬が近づいてくると、枝についた葉をすべて振り落とさねばならない。葉が残って、そこへ雪が積もるとその重さにもはや耐えられないことは分かっているからである。

だが、葉を振り落とすためには大きな力を必要とする。巨樹は、渾身の力を込めて葉を落とそうとする。

しかし、雪はやってきた。葉はまだほとんどが枝に残っている。この冬は、確実に最後の冬になるだろう。

そして、ある静かな夜、真っ白な景色の中で、巨大な枝は轟音とともに折れて地面に落ちる。

その後の永遠とも思われる静寂。何百年も生きてきた巨樹の最期である。

(何年も前に見たテレビのドキュメンタリーと私の創造的回想による)

ただそこに在るだけのように一年一年を積み重ねてきた老木の最後の奮闘。

生きるために必死でない生き物など存在しない。