イスラエル軍の戦車の中から描かれる戦争。戦車の中の4人は全員が若く、戦争に慣れていない。士気も高いとは言えない、中途半端な兵隊たちだ。
規律正しい日本の軍隊のイメージとは程遠く、これで死なない方が不思議だ、と思ったりするが、案外、今戦争が起こったら、いやいやながら徴兵された若者たちはこんなものかもしれない、とも思う。
戦車のスコープには、戦争の悲惨が映り込む。音のない映画を観ているようで、自分がその現場にいる感じがしない。
この映画と比較される「Uボート」で感じた、密室の息苦しさが感じられない。
こうした緊張感の欠けてどこか間の抜けた世界が本当の戦争なのだろうか。もし、そうだとしたら、逆にそのような世界で死ぬことに対する嫌悪感というものがあるかもしれない。
死んでも死にきれない、とはこのような状況で死ぬときに使う言葉だ。
映画が描こうとしているものとは全く違っているだろうが、この生ぬるさが私たちの生きている世界に合致する。
私だけかもしれないが、この映画を観て、「そのような中で死なないように生きたい」と思った。