gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 ノー・マンズ・ランド

ユーゴスラビア紛争はまだつい最近の出来事という印象がある。そこで起こったたくさんの戦争の中のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が舞台となっている。

民族の争いが、現代においてもここまでエスカレートしてしまうのはなぜだろう。映画の中のムスリム人とセルビア人の一対一のやりとりがコメディに見えた。民族の争いとは、こんなに幼稚なものだろうか。

「お前が先に始めただろう!」「いや、お前だ!」

夫婦喧嘩に似ていなくもない。つまり、近くに住んでいる似た者同士は、お互いに相手を内部的に見てしまうために、冷静さを欠いた争いを始めてしまうのだろう。

地雷を自分の下にセットされた兵士だけが、冷静に人間を見ることができている。兵士3人のうち、予め死を約束された彼が映画の最後まで生き延びる。

そして、国連軍は不能である。それは、夫婦喧嘩を裁判官が止めに入るような役割なのかもしれない。そもそものところで噛み合っていない。

ルワンダでは、虐殺終了後に国連によるジェノサイドの認定がされている。)

コメディのような軽さが残るこの映画の主題は当然のことながら重い。軽さによって、それが見逃されてしまわないことを願う。

国民全員が地雷を仕掛けられた状態ならば、殺し合いはない。この映画で示された真実はこれに尽きる。

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