2005年。アメリカ。
ドン・ファンに喩えられるほどのプレイボーイ、ドン(ビル・マーレイ)は、独身のまま、すでに初老の年代に差し掛かっていた。
ある日、20年前のガールフレンドからピンクの封筒の手紙が届く。彼女は別れてからドンの子を身ごもったことを知り、そのとき生まれた男の子が19歳になり、父親探しの旅に出た、という内容だ。しかし、肝心の本人の名前が書かれていない。
心当たりのある女性は5人。ドンはおせっかいな隣人の勧めに従って、ピンクの花束を持って、それぞれを訪ねることになる。
私はビル・マーレイという人の背筋の伸びた立ち姿が好きだ。困ったような顔で黙って立っているが、いつも背筋は伸びている。この姿勢のために、彼は常に滲み出るような「よい人」を演じることになるのだろう。
この映画は、時が過ぎるということの現実を、ストレートに描いている。ひねっているところがどこにもないことに、好感を覚える。
ブロークン・フラワーズは、つぼみが開いた頃とはまた別の美しさを讃えている。