19時過ぎに東京の下町で仕事を終えて、小雪の降る中、食事をしようと店を探した。そして、なんとなく、古びた佇まいの洋食屋に入った。
20席くらいあったが、客は一人もいなかった。背筋のピシッと伸びたおばあさんが出てきて、気高く「お好きな席へどうぞ」。一応遠慮して、2人席に座った。
厨房には、おそらくご主人。老夫婦で営む洋食屋。店内は、すべてが古びていて、すべてが微笑んでいる。でも、掃除はしっかりされていて、暖かくて居心地がよい。
メニューを見ると、定食屋にしてはちょっと高い。ハンバーグが1100円。ライス200円とみそ汁100円は別料金だ。さらに税別。客が入らない一番の理由はこれだろう。
でも、しっかりと時間をかけて焼いたハンバーグを食べさせてもらった。人は入らなくても決して手は抜かない。
30年以上も続いているであろうこの店は、時代が変わっても最後まで変わらないスタンスを貫こうとしているのだろう。
食べ終わって店を出ると、向かいには威勢のいい若者たちが営むラーメン屋。そこそこ人が入っている。ちょっとおしゃれな外装。がんばっている。しかし、この老夫婦の見ている世界とは、明らかに全く違う。
何かが足りないんじゃないだろうか?もちろん、いつだって、誰だって、何かが欠けているだろう。でも、それでいいんだろうか?と自問することにはきっと意味がある。
いい夕食だった。