gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 父、帰る

2003年、ロシア。

母親と祖母と一緒に暮らしていた思春期の兄弟2人のもとに、写真でしか顔を知らない父が12年ぶりに帰ってきて、2人と旅に出かけ、無人島で数日を過ごす。

バックに流れる音楽は、常に不気味で、いつ何が起きるかわからない。息子たちが無邪気な顔を見せたのはほんの一瞬で、強権をふるう父の前に、顔を曇らせてゆく。

父を受け入れようとする兄と、反発を強める弟。息子たちに自分のやり方でしか愛情を表現できない父。

12年の時を埋めることのできないまま、父と子の衝突の最中、父は高台に上った息子を助けようとして、自らが落ちて命を落とす。

青い空と美しい積乱雲。突然の激しい雨。自然はまるで父のようだ。そして、その自然は父の死体を載せた小舟を静かに海の底へ沈める。

母だけの手で育てられた兄弟には、父の強さが欠けていた。父の死とともに、明確に変わったのは兄だ。兄には父が乗り移ったかのように顔が引き締まった。これからの家庭を支えていくだろう。

悲劇だが、これでよかったのかもしれない、と思わせるところが怖い。冷徹な作者の眼。

ひさしぶりに、怖い映画を観た。

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