gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

本 アルケミスト パウロ・コエーリョ著

アルケミストとは錬金術師のことで、鉛などを金に変える術を身に付けた人。

20年くらい前に友人に勧められて読んだが、今回、就職希望者の中に「私はこの本が好きです」と言って、本を置いていった人がいて、久しぶりに読んだ。懐かしい本だ。

自分が、宝物を探しに行くとか、鉛を金に変えるとかにあまり興味を持てないことと、主人公や賢者たちもそれ自体に興味はなさそうな人物として描かれているため、そもそもどこかスッキリしないが、童話的に書かれるためには、そのへんにゴールを置いた方がわかりやすい、ということだろうか。(ここのところがスッキリしないところが、私の欠陥なのかもしれない。)

内容は、教訓に満ちている。己の心と会話せよ、などなど。つまるところは、感性を磨け、ということに集約されるのかな。


心と会話できれば、砂漠や風や太陽や神と会話できる、というのは抵抗ない。彼らが私に興味を持つかどうかは別として、話しかけ、じっと耳を澄ますことは得意分野だ。だが、それは、砂漠や風や太陽や神を内なるものとして見ることだと思う。つまり、モノローグにすぎない。

むしろ、外国人と会話する方が私にはずっと難しい。相手が私に興味を持たなければ、成立しないためである。外国人との会話は、外との対話、つまりダイアローグである。エンターテイナーである必要がある。(これも私に足りないところだ。)

著者は、この二つを分けていないだろう。

ノローグであり、同時にダイアローグであるようなコミュニケーションが書かれているのだろう。そのようなコミュニケーションがすべてを一つにする、と。

物語が発表されたのは1988年。米ソの冷戦終結間近である。世界は一つになる、と信じられた時代にふさわしい本だったかもしれない。20年以上が経った今、この本はどのように読まれるだろうか。

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