gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

遠くはなれて

年が明けたので熊本に住む母に電話した。

私は妻の実家である函館にいて、白い雪が平らに続く大地と遠く広がる曇り空を眺めていた。

母は18年前のこの時期に父と訪れた私の留学先バッファローの風景を思い浮かべて、「そっちはバッファローみたいでしょ」という。

母が目を細めて話している様子が伝わる。

確かにいま目にしている風景はバッファローそのものである。

郊外のショッピングセンターへスタッドレスタイヤを履いた車で向かう休日。生活のスタイルも含めて、アメリカ北部の郊外都市そっくりだ。

あの町から遠くはなれて、私は生きている。しかし、あの町の貧しさとそれとは裏腹の豊かさが、未来の社会のイメージとして私の中に棲みついていることに気づく。

そのイメージは、私にバラ色の未来を抱かせてはくれないが、だからといって、決して希望を奪い取りもしない。

2012年。私たちには、遠くはなれて、初めて見えてくるものがある。静かに目を凝らすことによって、大事なものが見えてくる。

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