1996年、コーエン兄弟監督。
アメリカ・ミネソタ州の雪に覆われた町が舞台である。その景色は私が1996年まで4年間を過ごしたニューヨーク州バッファローにも似ている。吹雪の田舎町の景色は、アメリカではどこも同じである。そんなどこにでもあるような町が舞台だ。
つまらない誘拐犯罪の計画。偶発的に起こるつまらない殺人事件。人間がその人格とは無関係に次々に殺されていく。犯人たちはなにひとつ完璧な仕事ができない単なる間抜けたちである。
一方で、犯人を追う女警察署長は、妊娠8カ月。夫婦仲は円満で、友人たちも人柄がよい。頭の切れはよいが、人が良すぎて人情話に騙されたりする。
結局、その真っ当な女警察署長が、犯人を捕まえて終わる。おなかの子は大丈夫だ。「生きることはもっと価値のあることじゃないかしら。」そう犯人に話しかける。
サスペンスと吉本新喜劇の間にあるような、不思議なコンビネーション。そのどちらにもリアリティはないが、なぜかコンビネーションにはリアリティがある。
私は、映画を観ている間、バッファローにいる自分に戻った気分になった。