年を重ねるごとに、バラバラに見えていた経験がつながって見えてくるもので、ぼくは旅の話をしながら、なにか別の風景を心の中に眺めていた。
旅は、自由とはどのような状態をいうのか、をシンプルに理解させてくれた。
でも、それを分かったとしても、自由にはなれない。
今思えば、それが始まりだった。
その後、ぼくはバッファローで建築を学ぶことになり、廃墟のような町で、模型の材料集めにスクラップヤードに通った。
うず高く積まれた、捨てられたもの、の山には、ベンツのボディとファミリーカーのボディが何の区別もなくただの鉄の塊として積み上げられていて、「スクラップの山」「元は何だったのか」「引きずられたり、踏まれたりしたカタチやディテール」という3つの視点が交錯する不思議な世界がそこにあった。
1番目は「経済的」、2番目は「一般的」、3番目は「創造的」。
ぼくの頭を覚醒してくれるのは、紛れもなく3番目の視点だが、1番目、2番目が共存するからこそ、3番目の視点が出てくることに気づいた。
それが、店舗空間をつくる仕事をぼくにさせているのだと思う。
1番目、2番目だけを考えて、つくられる店舗が多いなかで。