gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

木の葉と固有周期

あらゆる物体には、固有周期と固有モード(揺れるときのかたち)というものがあって、ある外力を受けたときに、その外力に固有周期と同じ周期の振動が含まれていれば、共振を起こして、その周期で固有モードのかたちを描きながら激しく揺れる。

有周期と固有モードは、硬さや形によって変わる。計算によって、あらゆる物体の揺れ方は想定することができる。硬くて短いものは、速い振動で小さく揺れるし、やわらかくて長いものはゆっくりと大きく揺れる。あらゆる物体はそんなものたちの組合せでできているのである。


アメリカ2年目の夏休みはほとんどひとりで過ごした。建築のアイディアコンペに参加するために、友人たちが旅行や帰省でバッファローの町を去っていく中、ひとり取り残されたためである。

アパートの2階に住んでいた私は、窓から緑一色の景色をぼんやり眺めながら、アイディアを練る毎日を過ごした。

その景色の中の、一本の木のことを私は忘れることができない。それは、さわやかな黄緑に透ける葉に覆われた、2メートルくらいの低い木だった。

その中の1枚の葉が、私に向かって存在をアピールするかのように、そして、まるでウチワで扇ぐように、パタパタと10センチくらいの振動をずっと続けていた。他の葉は揺れていなくても、その葉だけ機械仕掛けのように。

いつ眺めても、葉は私にアピールを続けていたので、不思議に思って3日目くらいに、外へ見にいった。なんの仕掛けもなかった。そよ風がたまに吹くくらいだったが、そんなことはお構いなしに、葉は揺れ続けているようだった。

たぶん、固有周期と固有モードが他の部分とは大きく違っていて、ほんの少しの風でも大きく揺れ続ける構造になっていたのだろう。

見た感じでは、なんら他の部分と変わっているようには見えない。何かとても微妙な違いがあったのだろうが、その秘密は最後までわからなかった。

MITに弱い力をポンと加えただけで波のように激しく動くモービルをつくるアーティストがいたが、彼ならきっとこの秘密がわかるだろう。

が、わからない私は、きっと先祖の霊が私に「見守ってるよ」というサインを送ってくれているに違いない、という方向に想像したりする。それはそれで、人間を孤独から救ってくれる力になったりするのである。


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