gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

チェーン店について 3

日本が戦後の高度成長を経て、得たものの一つは、脱共同体の場所としての都会生活であろう。

共同体の規則に従った窮屈な生活から逃れて、都会で暮らすことの開放感は「1対多」の関係性を次々に生み出し、人は人ごみに紛れて生きるようになった。

やがて、そのような生活スタイルは日本中に広がった。チェーン店の進出によって、どこへ行っても、店の選択肢はさほど変わらない。

「1対多」の関係がここまで広がってしまうと、さすがに問題が生じてくる。他人に興味を持たない人が増え、また、興味は持っても適切な人間関係をつくれない人が増えてきた。

前回も書いたが、基本としては、人との距離は、遠すぎず、近すぎず、が理想であろう。それはつまり、「1対多」にも、「1対1」にもなれる関係性をつくれる、ということではないだろうか。

私の専門は空間だから、一つ一つのチェーン店のつくりを見てみる。機能性はパーフェクトに問題がない。空間には無駄がない。ほとんどのお店は、客からクレームが来ないことを目的としてつくられているから、創造性は二の次である。設計者は冒険をしてはいけない、というルールがあるかのようだ。とりあえず、以上のような特徴が見えてくる。

これでは、「1対多」の関係性しかつくれないということに納得する。

「1対1」の関係性をつくりだすために必要なことはなんだろう?

(つづく)