gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

暴力的なもの

チュニジアの海辺のリゾート地スースで、ひとり海辺を散歩した。フランス人を中心にたくさんのヨーロッパ人が休暇を過ごす町である。

チュニジア人が集まっている場所を通りがかると、数人の40代くらいの男たちのグループから声がかかった。彼らは昼間から酒を飲んでいた。飲んでいけ、ということらしい。断る理由もなかったので、いっしょに飲んだ。陽気なひとときを過ごした。

私は砂漠を旅するためのラクダを買いたくてチュニジアに来ていた。そう話すと、俺たちも探してやる、と言う。2000円くれたら、手配してやるよ、と言ってきた。飲んだくれの言うことだから、半分しか聞かなかったが、とりあえず酒も飲ませてもらったことだし、お金を渡して、次の日も会う約束をした。

次の日、約束の場所へいくと昨日の男がいた。案の定、ラクダを買える手配など何もしていないらしい。期待していなかったから別に怒る気にもならなかったが、彼は急に凄んできて、「あんたは頭がいいよ。普通、外国人が一人であんな場所を歩いていたら、身包みはがされて当たり前なんだが。そして、おれたちの家へ運んで、レイプされるのが普通さ。あんたがおれたちの誘いを無視したら、そうなってた。だが、あんたは断らなかった。だから、今、無事でいる。それだけだ。」・・・みたいなことを言う。そして、去っていった。

「ふーん」それを言うために約束の場所へ来るなんて、なんとも律儀な奴である。

彼らがどのくらいワルイやつらなのかは知らない。腕に刺青が入っていたが、それが何を保証するわけでもない。

海辺でごろごろしている人間は、つまるところ、暇なのだ。暴力的なものを纏ってみては、ちょっとスリルを味わって、生きていることを確かめたいのだろう。