gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 エリ・エリ・レマ・サバクタニ

タイトルは「神よ、神よ、なんぞ我を見捨てたもうや」というイエスが十字架に張り付けられ息を引き取る直前に叫んだ言葉である。

自殺したくなる病「レミング病」が蔓延する社会。二人組のミュージシャンの奏でる音だけがこの病から人を救うことができる。

それを聞いた大金持ちがこの病に感染した孫娘を救ってほしい、と二人組のもとへ訪れる。

エスのような佇まいのミュージシャン。ノイズのような、音楽ともいえない音楽によって病人が救われる、という「ありえない」と一笑にふされるような設定。

そこには、一見価値のないものこそが実効性を持つ世界が表現されている。

死の世界からあらゆる音を集め、廃校になった校舎のスタジオで、淡々と音集めに明け暮れる二人の姿が愛おしい。それは、イエスが復活したように、死の世界から何かを復活させる行為である。

そして、すべてのつくる行為は死の世界から何かを復活させる行為である。

「ありえない」と嘲笑する自分の中にいる自分と今日も対峙しながら生きる毎日である。