家から100mのところに乃木神社があり、旧乃木邸もそこにある。
言わずと知れた、乃木希典が妻・静子ともに自刃した場所だ。
ぼくは、この神社の鳥居の前を過ぎるときには、必ず立ち止まり、拝礼する。
それは、乃木に対して行っているという意識はない。
ただ、そうすることで、今日も背筋が伸びる。
司馬遼太郎など、乃木の軍人としての能力を否定する者もいる。そして、擁護派もいる。
だが、軍人としての域を越えたところに、乃木の魅力はあり、日露戦争の旅順要塞攻撃についても、その本質は、正しいか否かを越えたところにあるのかもしれない。
そう言ってしまうと、その後の第二次世界大戦の日本の失敗も、同様の話になってしまいそうで問題だが・・・。
正攻法で敵の軍艦へ突っ込もうとしては追撃されることをただ繰り返した第二次世界大戦後期の特攻隊と同じく、司令官が思考停止状態に陥っていたものと断じて、乃木の旅順要塞攻撃を重ね合わせてよいものかはわからない。
双方とも、兵士たちは無駄死にだったのか?
だが、そこに兵士たちの戦意が持続していたことも忘れてはならないだろう。
他国が恐れていたのは、むしろその折れることのない精神であることは間違いない。