ぼくの小さい頃の思い出には、説明しがたいような怖さが伴っている。
それは夢に出てくるような漠然とした空気感であり、色がない。セピア色と言えばそうかもしれないが、とにかくあいまいだ。
高瀬泰司さんは「はったい粉とコスモス」の中で、子供の頃はすぐ隣に死という名の暗闇がたっぷりと広がっている、と書かれているが、それなのかもしれない、とも思う。
ぼくのイメージでいえば、沼で遊んでいるような感じだ。いつか足をとられて、動けなくなる恐怖かなぁ。それから、音もなくゆっくりと沈んでいくような・・・。
けれど、その世界は懐かしくて、親しい感覚も伴っている。だから、ぼくはそのイメージをいつもどこかで探し求めている。
冷たさはない。季節は夏だったのかもしれない。