gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

タンザニアの新札 その1

1985年。タンザニアを旅行中に100シリング紙幣の新札が発行された。100シリング紙幣は日本で言えば1万円札にあたる、最も大きな金額の紙幣だ。

なんと1週間のうちに銀行で旧紙幣を新紙幣に交換しないと、旧紙幣は無効になってしまうという。むちゃくちゃだ。銀行はどこへ行ってもタンザニア国民の長蛇の列。みんな必死である。

だが、この問題は外国人旅行者にとっても深刻な問題だった。当時、タンザニア通貨は交換レートが公定レートと闇レートに分かれていて、闇レートは公定レートの5分の1で取引きされていた。

闇レートのある通貨は、通常国外への持ち出しが禁止されている。だから、もちろん建前上は国外からの持ち込みがあるわけがない。だが、隣国ケニアからタンザニアへ入る旅行者にとっては、ケニアで個人から闇レートでタンザニア通貨を手に入れることが半ば当然のこととなっていた。公定レートで換金して5倍の物価で旅行する人などまずいないのだ。

ケニアからタンザニアへの入国審査は、厳しい。審査官は持ち込まれるタンザニア紙幣を躍起になって探す。見つけたら没収。ふつうは、審査官の懐におさまる、と言われていた。審査官は、人気の職業だったろう。

私も、他の日本人旅行者のアドバイスにしたがって、ありとあらゆるところに隠した。どこに隠したかは書かない方がいいだろう。その審査官は、私ひとりの調べに20分かけた。そして、ようやくあきらめた。

だからといって、外国人旅行者が銀行で、つまり公定レートで全く交換しないわけではない。なぜなら、入国時にデクラレーションフォームと呼ばれる紙をもらうからだ。銀行でいくら換金して旅をしたかがそれに書き込まれる。当時は銀行員が手書きで書き込んだ。だから、外国人旅行者はほんの数ドルを銀行で換金して、ホテルへ帰ったら自分でフォームに書かれた金額のゼロを増やしたりして、出国時に怪しまれないくらいの金額を銀行で交換したことにする。

当時、タンザニアを旅行するには、そんなデリケートな配慮が必要とされた。そんな国を旅行中に、闇レートで買ったたくさんの旧札を1週間以内に銀行で換金しなければならなくなったのだ。 (つづく)

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