gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 ぐるりのこと

「ぐるりのこと」というタイトルが重要である。

聞きなれない言葉だが、つまり、「身のまわりのこと」という意味だろうと想像しながら、映画を見る。そうすれば、坦々としたストーリーの中に、主人公の夫婦を中心として、同心円状に広がる世界が描かれていることに気づくことができる。

そして、そのようにある世界に対して、私はどのように向き合うか。中心から外へ向けてシンプルなベクトルをイメージできる。それが、シンプルに気持ちがよい。「生きる」というイメージをさわやかに提示した映画だ。

そして、翔子の再生の象徴として、再び絵を描き始める姿が美しい。花に向き合う。そこから、新しい人生が始まる。

最後に、中心から一番遠くにいた、遠い過去に失踪した父親を訪ね、リアルな存在に変わることによって、翔子は完全に自分の人生を取り戻す。

見たいものだけを見るのではなく、すべての「ぐるりのこと」を直視せよ。そんな強いメッセージが、おだやかな印象の中に浮かび上がってくる。