2006年。宮崎吾朗監督。スタジオ・ジブリ。岡田准一。手嶌葵。
「ぼくの本当の名前は何なの?」
陽向は、この映画を観た後、開口一番こう訊いてきた。
映画の中では、「本当の名前を告げると、本来持っていた力が引き出されたり、他人の意のままに操られたりする」とされている。
霊的な世界では、文化の違いを問わず、よく語られることだ。
親が贈る名前を「偽りの名前」と呼ぶべきではないが、生まれながらに「本来の名前がある」と信じることは、その人に力を与えるだろう。
固有名は、その人とその人以外と言えば無限の世界の広がりをつくるものである、ということが頭の中でイメージできるかどうかで、自ずと生き方は変わってくる。
もう一つ。「影」の存在。
自分に影の存在があるか?
陽向には、このことも想像してもらいたい。
誰にも、影は存在する。
ぼくの眼前で光の中にある人が、一貫して光の中にあり続けることをぼくは信じない。
人は、光と影とのバランスをとりながら生きている。
影がぼくから離れていかないように、ぼくは影の存在に向き合う時間をつくろう。
ぼくらは映画に「答え」を求めるべきではない。いつも、そこに「問い」を探すのだ。