「トシ、日本の唄を歌ってくれ」と先生に言われて、アジアで流行ったと聞いたことがあった「昴」を歌った。
大学時代にタイを旅したときのこと。コンケーン大学にふらっと遊びに行ったら、小さな村に小さなダムをつくる学生のボランティア活動に参加することになった。
大きな穴を掘り、バケツリレーで土を外へ出し、土を丸太で突き固めて、手で曲げた鉄筋を配置し、コンクリートを練って流し込む。全ての作業は手で行う。村人も総出でがんばる。
土を丸太でポンポンと突き固めているときに、引率の先生から声をかけられたのだ。
みんながシンとして聴いてくれる。歌い終わると拍手の後で、先生が「おお、布施明のようだ」
調子に乗って、その村ではたくさんの唄を歌った。昼の炎天下での作業は過酷だったが、楽しい毎日だった。
アジアを旅するとき、日本の唄はコミュニケーションの手段になる。よくしてもらったお礼になったかどうかはわからないけれど。