2023年。金大偉監督。
失われゆく満州族のシャーマン文化を記録する。
天と地を繋ぐ役割、シャーマン。金さんは、アーティストはシャーマンだという。
金さんとは1990年に軍事ジャーナリスト・加藤健二郎さんたちと遊んでいるときにお会いして以来の友人だ。金さんに哲学入門書を紹介してもらって、そこから哲学を読むようになった。密に連絡を取り合ってきたわけではないけれど、金さんとの出会いはぼくに大きな影響を与えてくれた。
金さん自身が満州人であり、14歳で日本に来られた。
金さんは失われていくものを撮り続けている。たぶん、「それを記録するのは自分しかいない」という使命感に突き動かされている部分もあるのだろう。
万物は消えゆくときに光を放つように感じる。もちろんそれは認識する者の中に見える光だが、その光の揺らぎが大きいとき、そこから新しいものが生まれるのだと思う。
金さんの映画の役割は、きっと光の揺らぎを大きくすることであり、ぼくもまたそのことを自覚して失われていくものと関わって空間をつくろうとしている。
では、彼の持っている切実さを、ぼくは持っているだろうか?