gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

川のあるけしき

けしきとは
景色 または 気色

日本のものつくりでは
わずかな
ほつれ、ゆがみ、しみ、きずなど
完全でないものに揺らぎを見出し
けしきと呼んで美の中へ取り込む


川は流れ
時をさかのぼる

ものつくりの場所から
解かれて流れ始める時間の川に
染められた帯を洗う


川岸の草露は
自分の重さに身を任せ
流れ落ちて
さまざまな色を成す


さらに時をさかのぼり
絹の源泉である繭玉に至る

蚕はその命と引き換えにつくった白い世界を
一すじの糸も切ることなく
大事になめて溶かして
小さな穴を開けて外へ羽ばたく


思えば その始まりからずっと
大事に大事につくられてきたものだったのだ


蚕の姿を心に描いた瞬間に
川は未来へと流れ始める