gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

バルセロナの集合住宅回想

ぼくの理想の建築物は?と問われたら、すぐさまこのバルセロナの集合住宅を思い浮かべる。

 

1995年の夏に滞在したバルセロナはぼくの空間感覚に大きな影響をもたらしたが、なかでも旧市街にあるこの集合住宅のインパクトは忘れられない。

 

元の建物が半分壊されて、室内の界壁が露出したため、それぞれの住戸毎の、内壁の塗装や壁紙がカラフルに外に表れて愉しい外観になっている。

 

残った住戸では、まだ普通に暮らしが営まれていて、中年女性二人が窓から顔を出して、斜め上下の階同士で大声で笑いながら話している。なんて活き活きとした生活だろう。

 

半分壊れていることの魅力とは、完全なものとは別次元なところにある。本能的に、人はそれを知っているはずだ。

 

人間の人間たる所以が、外の通りにまで感じられるのはどうしてだろう?「くずれ、ゆがみ、はみだしなどの概して不均一なものに対して、鋭い美意識が働き、全体の微妙な均衡の揺れをすばやく美の範疇にとりこむ」ことは、日本人が得意であると志村ふくみ氏はいうが、きっと人類全体で共有できるものに進化してきている。

 

人間がありのままの人間として生きるために、今このような空間が必要とされている。ぼくは決して冗談で言っているのではない。