gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

2021の指針 2

その後、情報化社会が急速に進んで、発展途上国と呼ばれる場所にも世界各国の情報で溢れ返るようになった。

 

今回の旅で、どの地方へ行っても、同じチェーン店で食事や買い物をし続けることができるように、たぶんどの国へ行っても同じような経験しかできなくなってしまっているのかもしれない。

 

ルール、尺度が世界単位になって、もう土地特有の経験はだんだんできなくなってきているのではないか。

 

そんなことを考えているとき、ふと昨年の正月の旅を思い出した。伊豆・下田の金谷旅館の千人風呂へ行ったときのこと。そこは130年の歴史ある老舗旅館だった。その古いヒノキ造りの大きな風呂はふつうに言えば男湯なのだが、女湯に温水路で通じていて、女湯からいくつかの扉を開けて女性が入ってこれる混浴。

 

なぜ、現在でもこんな風呂があるのか?それは、歴史を持っているからだ。もし、金谷旅館が改築されたら、こんな独自のルールはすぐに失われてしまうだろう。物理的な空間の古さが、威厳を持って独自のルールを可能にする。

 

大きな集合のルールに従わず、個別のルールを通す。それによってしか多様性は保たれないのではないか?「多様な私というものが保証されるのがパブリックという空間」であるならば、この歴史の力をぼくらは無視できない。

 

歴史を物理的にどんどん失っていく中、ぼくらのSOTOCHIKUは対抗手段になりうる。

 

ぼくらが今後つくっていく空間が、大きな集合のルールに呑み込まれることなく、独自のルールを持ちうるような力を与えたい。

 


人と空間とが一体化するならば、大きな集合のルールとは別の新たなルールを個人が生み出して、多様な私というものを保証したい。