gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

日本語の美しさ

ぼくは、森敦の書く日本語が好きだ。

 

「きみはきみの未来にきみを遮る川を予感し、きみの前にそばだつ山を予感するがごとく、川を再現し山を再現して行く。おそらく、きみはいかなるものからもその意味を取り去ることによって構造し、構造することによって意味を見いだしているのだろう。」

 

ぼくがまだ小さい頃に書かれた文章だろう。どう説明したらよいか、分からない。研ぎ澄まされた鋭利な刃物を感じる。ぼくはここへたどり着きたい一心で生きている。

 

これに対し、しなやかな曲線を成すような美しい日本語がある。例えば、志村ふくみの文章だ。

 

「けしきとは景色ー気色のことで自然界の景と気とをうまくとりいれることだという。日本の芸術、ことに工芸には一寸言葉では説明のつかない景と気と色があって、外国であったら、調子がくずれたとか、失敗したということになるものを、日本人はほんの少しのずれ、ゆがみ、はみだし、むら、しみ、くずれなど概して均一でないものに対して、鋭い美意識が働き、全体の微妙な均衡の揺れをすばやく美の範疇にとりこむことを心得ている。それは自然の仕組に対して、日本人が従おうとする姿勢にもよるだろうが、工芸という素材を扱う仕事には、むしろそのあたりを会得しなくてはどうにもならないものがあると思われる。」