gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

大山登山

陽向の運動になるよう時間を見つけて家族で軽い登山をしている。鋸山、高尾山、富山に続いて、今回は丹沢の大山。

 

「ケーブルカーで阿夫利神社まで登り、そこから90分の登山。下山は60分。」と、ウェブの情報。

 

確かに、登りはほぼその通りのスケジュールで頂上に着く。さて、下山。時刻は15時20分。ケーブルカーの下りの最終は17時。それまでは100分もあるから、十分だろう、という気持ちで下り始める。

 

しかし、陽向が極度に慎重になって、足が進まない。16時半を過ぎて、あと15分と書かれたところまでしかたどり着いていない。ぼくが陽向をサポートしながら降りていたが、先を行く妻から、「急げー!もう間に合わなくなるよー!」との叫び声。

 

どんなに急ごうとしても、もう体重50キロを超えた陽向を担いで下りることもできない。

 

陽向が「間に合うより、ケガしない方が大事だろー!」と叫び返す。まあ、その通りだ。でも、真っ暗になっては、岩がごろごろしている道は下れなくなる。まだ残り陽があるうちに下りなければならない。

 

そして、ケーブルカーが終わったら、そこから未知の真っ暗な道を自力で下りることもありうる。おまけに気温も下がってきている。陽向を無事麓まで下すことが可能だろうか?

 

「とにかく手をつないで、急ごう」と陽向を促すが、陽向が意地になって手を払いのける。「とにかく手をつなげ!」と頭をパンと叩くと、逆上してぼくの頭をパンと叩き返してきた。

 

「よーし、これでお相子だ。」と手を差し伸べる。ようやく陽向が手をつないでくれた。そこから、二人で急いで下り始める。すでに辺りには暗闇が迫っている。

 

やがて17時を過ぎて、ケーブルカーは発車してしまった。ぼくらはまだ岩場を下りている。「とにかく無事にたどり着こう。」

 

阿夫利神社に着いたのは17時10分頃。待っていた妻は、「よーし、歩いて帰ろう!」と機嫌がよい。

 

陽向も「そうだよ。ケーブルカーで下りるなんてつまらないからさ」

 

駅員さんに尋ねたら、麓まで明かりのついた道があるらしい。

 

「30分で着きます」と言われた。たぶん、ぼくらは60分かかるだろう。

 

その後も陽向はぼくの手をしっかりと握って三人で下りる。話すことがままならない機能性低血糖症と診断されて現在治療中だが、ぼくに彼の頭の中のことを堰を切ったように1時間以上も話し続けてくれた。

 

いい時間だった。そして、忘れられない一日になった。