ずいぶん前のことだが、写真家の友人がイラクで撮影したビデオを日本のテレビ局に紹介に行ったときのことを話してくれた。
そのビデオは、経済制裁を受けていた頃のイラクで日々たくさんの子供が死んでいることを伝える内容だった。日本のあるテレビ局のディレクターは、それを見て平然とこう言ったそうだ。
「イラクでたくさんの子供が死んで、(日本の)誰が困るの?」
友人は憤ってそう話した。確かに、こんな言葉を平然と発する人間は壊れているのかもしれない。
だが、同時に、そのディレクターは、語らない多くの日本人を代弁しているかもしれない。
今日も「遠い国」で私たちの生活からは想像もできない恐ろしいことが起きているだろう。
私はそのようなことに対して、直接的には何もできないまま、一生を終えるかもしれない。
だが、なぜそれが起きるかを知って、どのようにそれを免れることができるか、を考えて、その考えにしたがって生きることはできるかもしれない。
そのことにはきっと意味がある、と思う。