「好きな場所はどこですか?」
これは、私たちがクライアントに最初お会いしたときに必ず伺う質問だ。
この質問の答えは、どんな空間をつくるか、を考える上でとても参考になる。
自分が答えるとすれば、「バルセロナの旧市街」と答えるだろう。でも、それは、空間だけでなく、たまたまよい時間を過ごした場所だからかもしれない。
確かに、私は、バルセロナの旧市街へ行ったら、いつも幸せになれるわけではないだろう。
「町に受け入れられる」という感覚を持ったことがある人がいるかもしれない。私は、バルセロナでそんな感覚を持ったのだと思う。
逆に、他の町では「町に疎外されている」と感じたことがあるし、疎外されないまでも、「そっぽを向かれている」と感じることはとても多かった。
自分をかけがえのない存在と感じることができる場所。
バルセロナの人が私に対して温かかった、というわけではない。町並みが私に対して、「好きにしなさい」と語ってくれたように感じたのだ。
例えば、そのとき私は炎天下を歩き続けて、とても疲れていた。私は躊躇なく道端の建物の陰に座り、壁にもたれかかる。ベンチなどなくてもよい。町がそれを許してくれる。
それが私の「好きな場所」だ。