1929年、ミース・ファンデルローエ設計。バルセロナ万博のドイツ館として建てられた。
垂直と水平だけで成り立つシンプルな空間構成。しかし、素材の模様は過激ですらある。アルジェリアで切り出した大理石の模様が対称形に並べられて、女性の唇を思わせる。
だから、16年前に訪れた私の記憶の中では、バルセロナパビリオンのイメージは「過激な唇」として残っている。
「見るための空間であり、過ごすための空間ではない」と批判されるミースの空間だが、万博のパビリオンなら許されるだろう。過剰ともいえるくらいの素材の力をストイックな空間構成が最大限に引き出している。
ミースが意図したことであるかどうかは別として、私はそこで自由を感じたことを鮮明に憶えている。