途方もない時間が経過するか、大災害でもない限り街が壊れることはないけれど、ぼくらの仕事の中では、一つの店舗から他の店舗をつくるたびに、一つの秩序を持っていた空間が壊された状態を見ることになる。
それは、さながら壊れた街だ。
その状態は無意味なもの、ネガティブなものとして位置づけられていて、一刻も早く、次の状態を成立させることにエネルギーが注がれる。
壊して、新しいものをつくる、というのが、新しい価値を生むことであるならば、今を過去と断絶させることは不自然であり、壊れた街以上に、新しい歩みを喚起する風景もないのであれば、むしろ、壊れた街の風景を存続させることにエネルギーを注いだ方が社会の活性化につながる。
バルセロナの新市街と旧市街が重なり合ったような空間が、ぼくの理想の空間だ。