「夜露死苦現代詩」(都築響一)という奇妙な本がある。というか、この人の写真集「TOKYO STYLE」といい、とにかく普通ではない。とはいえ、書いてあることが奇妙というわけではない。この人の視線の先にあるものが奇妙なのだ。
奇妙と書いたが、奇妙こそが真っ当だともいえる。ほとんどの人が目を向けないものに彼の目は向いている。そして、それらは目を向けてみる価値が十分にあるものだ。私はこんな本を読みたかったのだと思う。
泣き笑いするくらい笑い転げながら、いつのまにか本当の涙に変わっている、みたいな本だ。そのような本には人肌の温度が感じられる。
例えば、老人病院の看護助手が書きとめた老人たちの言葉の数々が紹介されている。
「人生八王子」
「目から草が生えても人生ってもんだろ」
「おむつの中が犯罪でいっぱいだ」
そこに現代詩がある、といわれては、頷かざるを得ない。
(つづく)