gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

2012.3

ビルとビルの間

この仕事をしていると、こんな猫か泥棒しか入らないような、ビルとビルの間のわずか数十センチの空間に入ることがある。見上げると細いラインの空が、とても貴重な存在に思えるのだ。この気持ちが好きだ。もちろん、長くは居たくない。 ← グリッドフレームの…

映画 ファーゴ

1996年、コーエン兄弟監督。アメリカ・ミネソタ州の雪に覆われた町が舞台である。その景色は私が1996年まで4年間を過ごしたニューヨーク州バッファローにも似ている。吹雪の田舎町の景色は、アメリカではどこも同じである。そんなどこにでもあるよ…

死刑囚の俳句

都築響一「夜露死苦現代詩」に、死刑囚の俳句が紹介されている。綱 よごすまじく首拭く 寒の水和之という俳号の囚人が、31歳で死刑が執行される朝に詠んだ句だそうだ。句を詠むという行為は、彼の心の水面の波を鎮め、ついには鏡に変えたのだろうか。その静…

Clear Cherry

http://www.gridframe.co.jp/x01clear.htm吉祥寺のカフェ&ダイニング。地下にあることを忘れさせるような、すがすがしい屋外感覚の導入を意図している。まず、白い壁の前に白い布を張って、壁に3次元的な奥行を与えた。そしてさらに、その壁に花の咲く植物…

「夜露死苦現代詩」 都築響一

「夜露死苦現代詩」(都築響一)という奇妙な本がある。というか、この人の写真集「TOKYO STYLE」といい、とにかく普通ではない。とはいえ、書いてあることが奇妙というわけではない。この人の視線の先にあるものが奇妙なのだ。奇妙と書いたが、奇妙こそが真…

想像力

クライアントにはいろいろな方がいて、機能的な条件を事細かに提示してくださる方もいらっしゃるし、その条件すらつくり手の想像力に任せる、という姿勢の方もいらっしゃる。後者の場合は、想像力と取材力が重要で、プロジェクトを進める中には、いくらか運…

ケルト

あるプロジェクトのために、ケルト文化について調べている。人間も自然の一部であり一動物に過ぎない、という水平的なケルトの世界観。ギリシャ・ローマのように人間を精巧に描くことへの情熱は見られず、人間よりは動物を描いた。私は、森の中で老いて倒れ…

各国の平均寿命

私が初めて行った外国は、アフリカのケニアとタンザニアである。昨日、世界の平均寿命を調べてみたら、ケニアは54.2歳、タンザニアは55.4歳であった。ということは、私がそのときに出会ったほとんどのケニア人が、すでに平均寿命を過ぎていることになる。そ…

エチオピアの薔薇

エチオピアから質の良い薔薇が輸入されていると聞いた。私がケニアを旅行した1985年は確か隣のソマリアとともに難民キャンプがあって、とても貧しい国という印象があった。現在は、安定的に経済が成長しているらしい。だが、wikipediaによれば、現在も最貧国…

映画 地球交響曲第三番

およそ35億年前に地球に生命が誕生し、それから20億年経って命はオスとメスをつくり、それとともに「死」が命の仕組みの中にプログラムされた、というナレーションで始まるこの映画を、グリッドフレームの創設直前に観た。死によって生物は進化を遂げ、…

彼岸

彼岸の中日(春分の日、秋分の日)は、世界のどこにいても太陽は真東からのぼり、真西に沈む。その真西にあるといわれる西方浄土を向いて、手を合わせる。地球を感じられる日で、同時に、生と死がつながりを持つ日に設定されている。だから、いつも私は特別な…

MICHAEL KENNA

マイケル・ケンナの写真はとても空間的で、写真の中に入って時を過ごしたい、という欲求を駆り立てる。試しに、写真の中にテーブルと椅子を落書きしてみた。ほうら、ここに座ってみたいでしょ? ← グリッドフレームのHPはこちらです

ハチの巣

タイの東北部コンケーンのホテル。部屋は1室を残して満室状態だ、とロビーの男性は言った。ラッキー!とばかりに、残りの1室に決める。部屋に入り、一瞬ベッドに横になってから、シャワーを浴びようとシャワールームの扉を開ける。スズメバチが3匹ほどシ…

父の癖

父はひとりでふらりと出掛けて行っては、数時間後に焼き鳥やら饅頭やらを買って帰ってきた。たぶん遊んだ後で突然家族の顔を思い浮かべては、持ち合わせのお金でできることをする、という、父特有の愛情表現だったと思う。言ってみれば、その場の思い付きで…

映画 トゥルー・グリット

2010年、アメリカ。コーエン兄弟監督。父親を雇い人に殺された14歳の少女の復讐劇。同監督作品「ノーカントリー」の底知れない恐ろしさはこの作品にはない。復讐を遂げた代償に、少女は片腕を失う。それだけではない。彼女のために、命懸けで走ってく…

蝶を追いかける

春がやってきた。そろそろ蝶の舞う季節がやってくる。子供の頃、盲導犬の飼育係が主人公の漫画があった。まだ何も教育されていない子犬は、訓練の最中に目の前に飛んできた蝶を追いかけて、飼育係にひどく叱られる。私は蝶を追いかけることを禁止された犬に…

BOGOTA、発売

http://the-collection.jp/?pid=41097628GFのプロダクト部門、GF Standardがシリーズ第1弾のカウンターチェアBOGOTAを発売しました。「Made in Tokyo」、「創造的に、かつ、遊ぶように」をコンセプトに、使用範囲の広いスタンダードな家具を提供し…

正義

ジョージ秋山の「はぐれ雲」という漫画で、つぎのようなシーンがあった。男Aが男Bに刀で切りかかっているところに出くわして、Aを止めたらBは走って逃げて行った。Aに事情を聞くとBは親の仇で長い間ずっと探していた相手だった、という。見ず知らずの人…

変えるということ

坂口安吾について、柄谷行人が紹介するエピソードに次のようなものがある。パーティのスピーチで、突然コットという先生が、死んだクレマンソーについて沈痛な追悼演説をはじめた。彼はふだんヴォルテール流の「ニヒリストで無神論者」であったから、安吾は…

逆光

午後の光が視界を奪う。北国・バッファローで過ごした4年間は、このような景色を見ることが多かった。痛いほどの日差しを正面に見て、目を開けていられず、色の失われた世界を、まるで夢を見ているかのような心地で歩く。一瞬だけすべてがひっくり返る世界。…

311から1年

昨年の今日、東京でも震度5の地震だったが、身の周りの被害はほとんどなかった。その後、いくつかのプロジェクトが中止になり、経済的には打撃も受けたが、たぶん相対的には小さな被害に過ぎない。原発の影響は今後も予断を許さないが、今のところ、311…

変化

世の中が変わろうとしている、という感触がつかめてきた。この感触がつかめてきたことと、テレビを観なくなったことは無関係ではないような気がする。なぜなら、世の中は変化しても、テレビ局は変化していないからだろう。テレビが引っ張って世の中を変える…

Bird's Eye

人間が鳥の視点から世界を見渡したいという気持ちになるのは、きっと怖いからだ。自分を安全なところに置いて、見られる側でもあることを忘れ去りたいからだ。鳥の視点からでは、下界に手が届かない。だから、認識はするが何も変えられない。一日の中でどれ…

映画 ブラッディ・サンデー

血の日曜日事件(Bloody Sunday) は、1972年1月30日、公民権運動デモ行進中の北アイルランド、デリー市民27名がイギリス陸軍落下傘連隊第1大隊に銃撃された事件。14名死亡、13名負傷。市民は非武装で、5人は背後から射撃された。事件のあった地域の名を取っ…

おすすめ動画

youtubeで、右欄に出てくる「おすすめ動画」には、基本的に今観ている動画と関連しているものが20ほど並んでいる。例えば、椎名林檎の曲を聴いているなら、彼女の他の曲か、同じ曲をピアノで演奏した曲とか・・・。しかし、そこに一つか二つくらい、全く関連…

悲しみ

悲しくて陽向が泣く。悲しくて叫び続ける彼が眠るまで、抱いたまま立って、ゆっくりとしたリズムで背中をたたきつつ体を揺らす。悲しみは波のようで、大きく振れたかと思うとしばらく姿を消してはまた大きく振れる。その繰り返しの中で、ほんの少しずつだが…

月の花

夜、桜の木の下を通りながら天を見上げると、雲に霞んだ月。さっきまで雨を降らせた雲を通して降る光。桜の枝は蕾をふくらませて本当の春を待っている。枝には一足早くたった一輪の月の花が咲いた。 ← グリッドフレームのHPはこちらです

考える人

現場の職人さんで日頃から哲学の本を読まれている方がいらっしゃる。もちろん、そのような方がいて当然である。陽に焼けた顔やねじり鉢巻きや汚れたニッカポッカと、哲学の本のイメージがつながらないとしても、それは世間によって勝手につくり上げられたも…

U君からの電話

10年以上前に、グリッドフレームで一緒に仕事をしたU君に聞きたいことがあって電話をしたら、折り返しの電話がかかってきた。U君は現在、大阪の内装会社の部長を務めている。年は私より一回り若い。用件を話した後、彼が「ひとこと言いたいことがあって・…

GF Standard

スタンダードとはなんだろう? GF Standardは、この問いから生まれました。<GFとは?>Gridframe(http://www.gridframe.co.jp)は店舗をはじめとして様々な空間づくりを手がける空間アーティスト集団です。その14年に亘る経験の中で、空間の大部分を自社内…