都築響一「夜露死苦現代詩」に、死刑囚の俳句が紹介されている。
綱 よごすまじく首拭く 寒の水
和之という俳号の囚人が、31歳で死刑が執行される朝に詠んだ句だそうだ。句を詠むという行為は、彼の心の水面の波を鎮め、ついには鏡に変えたのだろうか。その静かな眼差しさえ見えるようだ。
叫びたし 寒満月の 割れるほど
最後まで無実を主張し、冤罪の疑いが強いと国会でも取り上げられながら、1975年に61歳で処刑された福岡事件の西武雄の辞世の句だそうだ。
恩赦決定は近いと思っていた矢先に死刑執行を告げられた、その日に詠んだ句である。
心の波は、頂点に達している。だが、それでも、句を詠む心境になれたのだ。
その境遇ゆえに、心の状態はいかばかりか、と思う。
今日、今年初めて、三人の死刑が執行されたと聞く。