gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

広がりのある風景 2

その頃、私にとって絵を描くことは見たままに描くことだった。そのことが美と本質的につながっているのかどうかはわからない。そもそも美について考えたことなど、一度もなかっただろう。見たままに近づけようとして絵を描く。だが、見たままにはならない。

多分おおざっぱにいえば、脳内イメージとしての再現力が足りないし、再現の命令を手に伝達する正確さが足りないのである。

見たままに描くことが目的であれば、目的には程遠い。

しかし、いつしか・・・見たままにならない部分が実は面白いのではないか、と思えてきた。見たままに描きたいのに見たままにならない。つまり、そうしたいのに、そうならない。自分という人間は、むしろそこに現れる。

そして、その部分こそが美の本質につながる可能性ではないか。

美の本質は、自分のあずかり知らぬところでこぼれ落ちてくるようなものだ、と。だが、美につながる可能性はあるにしても、精神がある目的に到達しようとする強い意思と実行がなければ、おそらく最後まで美が姿を現すことはないだろう。

(つづく)

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