朽ちかけた古いビルで、ビデオ・コンサートが開かれていて、私は折り畳み椅子に座って聴いているうちに眠りこけてしまった、という夢を見た。場所は、渋谷か、原宿か・・・?
コンサート終了後に目が覚めたら、持ってきたカバンが見当たらない。ゴミゴミした会場の人混みの中を、ほとんど絶望的な気持ちで探し回る。だれも私の困惑に関心すら示さない・・・。
置引きの犯人は、まるで何年もそのカバンを使い込んできたかのような顔をして、今頃地下鉄に乗っているのだろう。もしくは、近くの店で飲んでいるかもしれない。
どこかにはあるが、ここにはない。その事実は自分をやるせない気持ちにさせる。だが、愛着のあるそれは、この世から消えたわけではない。
もちろん、一生のうちでまた出会えるとは思わないまでも、「どこかにはある」ということには、やはりかすかな希望がある。
どこかにはあるが、ここにはない。
この認識を過去から未来に変える力が、人の一生の原動力ではないか。
・・・夢から覚めたら、カバンはここにあった。