gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

失踪

早朝、妻とジョギングに出かける。

陽向は、いつも熟睡している。もし、目が覚めたとしても、もう泣くことはなくなった。

きっと、youtubeでも見ながら帰りを待っているだろう。




20分後、ぼくが先に帰り着くと、陽向がいない。鍵は開けっ放しだ。

びっくりして、マンションの中を探し回る。友人宅も、申し訳ないけれど、呼び鈴を押して陽向が来ていないか聞いてみる。




マンションの中の心当たりには、どこにもいない。

外を探すことにする。




靴がなくなっているから、靴を履いて鍵を開けて、自ら出ていったようだ。

ぼくらを探して?

ジョギングのコースを彼は知らないから、そうではないだろう。




とりあえず、マンションの周辺を探したが、やはり、どこにもいない。





そのとき、家で待機している妻から電話。「ランドセルがないから、学校に行っているみたい。」




これまで、2km先の学校まで一人で行くことはなかったから、思いもしなかった。

それに、まだ学校に行く時間ではない。




自転車で、彼を追いかける。

学校までの道にも彼の姿は見当たらない。




学校の門を入ると、下駄箱の手前で、早く来た女の子たちと談笑している彼が遠くに見える。




緊張がするりと解けた。

「おまえ、心配したんだぞ!」

陽向に近づくと、「あれ、どうしたの?」という顔でぼくを見る。




女の子たちが「陽向くんがいちばんだったよ」




陽向は得意そうだ。

「どうして、パパたちが帰るのを待たなかったの?」

「だって、寝坊したと思った」

走って来たらしい。

ちゃんと、服を着て、忘れ物もないようだ。





「おなかすいてるだろ?なんか食べようよ」

「いやだ」

一番に登校した座を明け渡したくないらしい。顔に表れている。

家でご飯を用意しても、食べない朝もあるから、ここは引き下がることにする。





「これから、こんなことしちゃだめだぞ」

と言って、その場を離れた。





朝からどっと疲れた。

でも、陽向は、なんて清々しい顔をしていたんだろう。





一人で起きて、学校へ行くなんて、想像もしなかった。

きっと、めそめそ泣いているんだろうと思っていた。





こうやって、子供は自らハードルを越えていく。

自転車の横を夏の風が吹き抜けていく。





その後、陽向は何も食べていないことを先生に言って、ちゃっかりおにぎりをいただいたらしい。

「あいつめ!」

・・・苦笑いしかない。



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