夢から覚めたとき、夢の中の出来事は現実には起きていないことを確認して、安心することがある。ああ、よかった、と。
夢には意味がないかもしれない。だから、そこから何かを学ぶような類いのものではないかもしれない。だが、ああ、よかった、という安心を私は憎む。
それは、ゲームをリセットするようなもので、ものごとの一回性という過酷な、しかし、だからこそかけがえのない、経験を消してしまいかねない人間の弱さの表れだ。
一旦ゲームを始めたら、リセットし続ける。やめたくても、やめられない。自分に嫌悪を感じながらも、その無為なサイクルから出ることができない。
そして、そんな最中、人は無防備だ。ものごとの一回性に向き合わないとき、人は闘うことを止めている。
安心には、そんな危険がある。