「誰も知らない」の是枝監督の作品。別に大きな事件が起こるわけでもない一日が、ほんの少し人を変えて、それが永遠につながっていく。
久しぶりに両親に会う日とは、まさにそんな日であり、また、そんな日として記憶に残っていくのだろう。
母が相撲の力士の名前を思い出せなくて、息子が帰りのバスの中で「ああ、黒姫山だ」と思い出すシーン。それに続く、「いつもちょっと間に合わないんだよなあ」という台詞が私をドキリとさせる。
「まだ間に合う」と思っているうちに時間はどんどん過ぎていく。焦っても仕方がないことは、よく分かっている。ゆっくりと、けれど間に合うように、しっかりと時間とつきあうこと。あとは、天にまかせるしかない。
歩いても歩いても、たどりつけないところはあるだろうが、どこかしらにはたどりついているのが人生というものだろうから。