gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 カポーティ

アメリカの作家トルーマン・カポーティが代表作『冷血』を書いた過程を描いた映画である。

1959年、カンサスの小さな町で起きた一家4人の惨殺事件を取材し、最終的には死刑となる殺人犯2人を信頼させて、真実を聞き出すことにより、著作を成功させたカポーティという人間をどのように見るか、という映画である。殺人犯は、カポーティが自分たちを死刑から救ってくれると信じて、彼の取材に協力したのである。しかし、カポーティにはその気は全くなかったばかりか、彼らの死刑執行を書くために、早く死刑が執行されることを望んだのである。

作家という職業は、取材者に対して、観察者である自分と、生身の人間としての自分が共存していることの矛盾に悩まなければならない運命にある。例えば、宮沢賢治は、妹・とし子のいまわの際に、その両者の存在を感じ、引き裂かれるような想いを詩に残している。

カポーティは、最後まで生身の人間としての自分を封じた、と言える。もしくは、そのような人間性が欠落していたのではないか、とさえ、感じさせる映画であった。

アメリカへ行って、とてもフレンドリーな人々に対して最終的に感じるのは、最後の最後で裏切られるのでは?という疑問であったかもしれない。例えば、たくさんの人が、ブッシュ大統領に対して、そのような疑念を抱かなかっただろうか?

カポーティは、その意味で、アメリカの人間関係の問題を象徴していたのかもしれない。