妻と子供と青山通りを表参道から外苑前の方向に歩いていたら、突然空から生き物が落ちてきた。歩道にたたきつけられて、その瞬間電気が走ったように体が痙攣した。近寄るとツバメの雛だった。弱弱しく動いている。見上げると、店の壁の高いところに小さな巣が見えた。そこから落ちてしまったのだ。
通行人に踏まれないように雛を拾い上げると、脚を少し動かした。やわらかい体に外傷はない。羽が生えかけている。生後、何日くらいたっているのだろう。
拾い上げたはよかったが、これからどうすればよいのか、全く浮かばない。周囲の人は見向きもせず、通り過ぎていく。私たちだけ、青山通りに立ち止まって、おろおろしている。
結局、立ち止まっているうちに、雛は動かなくなった。40過ぎた大人が二人もいて、こんなときに何もできないのだ、ということに驚く。わたしたちには、こんな小さな命も救えない。
何度やりなおしても、同じ結果にしかならないだろうが、この申し訳ない感じは、どこにも行き場がない。